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【独占】酒と怒りと才能と──アンソニー・ホプキンスの人生を紐解く10の質問

Wake Up and Live

2025年12月1日(月)11時00分
ジェニファー・H・カニングハム(本誌米国版編集長)
いじめ、怒り、演技、そして救いについて BRANTLEY GUTIERREZ

いじめ、怒り、演技、そして救いについて BRANTLEY GUTIERREZ

<映画史に残る悪役ハンニバル・レクターを演じたアンソニー・ホプキンス。しかし彼が最も長く、深く戦ってきた「悪魔」は、スクリーンではなく自分の内側に潜んでいたものだった。87歳で発表した回想録『俺たちよくやったよな、坊主』には、いじめられっ子だった少年時代からアルコール依存症との闘い、そして俳優としての成功と静かな悟りまでが率直に語られている。本記事では、そのホプキンスに10の質問を投げかけ、波乱の人生から掴んだ真実に迫る>


▼目次
──新著のタイトル『俺たちよくやったよな、坊主』の元になった写真について教えて。
──そうすることで自分を守ろうとした?
──17歳の頃、成績表をめぐって人生の転機が訪れたと回想録にある。
──俳優として、一番のお手本となったのは誰か。
──断酒に至る道のりに多くのページを割いているが。
──つらい時期もあったと思うが、どうやって酒に手を出さずにいられたのか?
──読者に一番伝えたい人生の教訓がそこにあると?
──あなたは作曲家でもありアーティストでもある。創造に関するアドバイスは?
──若い時の自分にアドバイスをするとしたら?
──今のあなたの喜びや楽観的なものの見方を支えているものは?

映画『羊たちの沈黙』でアンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクターは、背筋も凍る悪のオーラを発散していた。だがホプキンス自身が闘った悪魔と比べたら、人喰い殺人鬼のレクター博士もかわいいものだ。

英ウェールズで過ごした子供時代は学校でいじめに遭い、反抗心と怒りをバネに成長した。大人になってからは、深刻なアルコール依存症に苦しんだ。

そうしたことを踏まえて見ると、11月4日に発売された回想録『俺たちよくやったよな、坊主(We Did OK, Kid)』(サイモン&シュスター社、未邦訳)のタイトルがぐっと重みを増す。「よくやった」は、数々の試練を乗り越えて成功をつかみ、自分と折り合いをつけた87年の人生に対する評価なのだ。

1965年、ホプキンスは伝説のシェークスピア俳優ローレンス・オリビエに才能を認められて名門ロイヤル・ナショナル・シアターに入団し、ここから映画史に残る名優へと羽ばたいた。

ウェールズ出身俳優アンソニー・ホプキンスのポートレイト、1972年

1972年、舞台から映画に活動の場を広げ始めた頃 ELLEN GRAHAM/GETTY IMAGES

その長いキャリアで、アカデミー賞の記録を2度塗り替えた。登場シーンがわずか16分の『羊たちの沈黙』で92年に主演男優賞を獲得し、ギネス世界記録で「出演時間が最も短い主演男優賞」に認定された。2021年には『ファーザー』で、83歳という史上最高齢の主演男優賞受賞者になった。

だが歴史に残るキャラクターをいくつも演じた男の仕事観は、驚くほどシンプルだ。

「以前に『どうやってレクター博士を演じたのですか』と質問されたときは、『まばたきをしないでじっと立っていた』と答えた。『日の名残り』の執事役について聞かれたときは、『なるべく静かにしていた』と答えた。演技なんて大したことじゃない」

ホプキンスはこう語り、演技はただの仕事だと強調する。

「私は配管工と同じ。『蛇口が壊れたんで直してくれませんか?』と頼まれれば、その家に出向いて修理する。それが仕事だから。演技は技術なんだ。そこに神秘はない。演技は神秘のベールに包まれていて俳優というのは特別な人間なのだと、世間は思いたがる。特別だって? 勘弁してほしい」

回想録も、この飾り気のない語り口でぐいぐい読ませる。名優として手にした栄誉からアルコール依存症との闘いまで、あらゆる出来事を率直に語る。俳優仲間と楽しく飲んでいたのが、いつしか孤独で危険な依存症の沼にはまっていった経緯も明かされる。

アンソニー・ホプキンス回想録『俺たちよくやったよな、坊主(We Did OK, Kid)』

11月出版の回想録 COURTESY OF S&S/SUMMIT BOOKS(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

依存症が悪化し、酩酊状態で車を運転したホプキンスはついに命の危険を感じて助けを求めた。

これをきっかけに50年近く酒を断ち、自分を丸ごと受容したことが現在の人生観を形成した。ホプキンスが今こうして貴重な知恵を共有してくれるのも、あのとき助けを求めたおかげだ。

ジェニファー・H・カニングハム本誌米国版編集長が、ホプキンスに話を聞いた。

アンソニー・ホプキンスへの本誌独自インタビュー映像、聞き手はカニングハム米国版編集長

◇ ◇ ◇


父と一緒に写る ホプキンス個人所蔵

3歳の時に父と COURTESY OF ANTHONY HOPKINS

──新著のタイトル『俺たちよくやったよな、坊主』の元になった写真について教えて。

第2次大戦中、1941年のことだった。私は3歳半だったが、なぜか記憶力がとてもよくてね。見たものを今でも思い出せる。

日曜の朝だった。父は当時「英国防空監視隊」に所属し、ボランティアで敵機の監視をしていた。あの朝、私は地面にアメを落として泣き出した。すると郵便局にいた男が別のアメをくれたんだ。

何年もたって、父と一緒に写るこの写真を見つけた(上の写真)。私は昔の自分を見て、思わず「俺たちよくやったよな、坊主」とつぶやいた。

なぜって、子供の頃の私は頭の回転が鈍かった。

人はこの世に生まれ、学校に上がると理解できないことを教えられる。私は駄目な子だった。勉強が苦手で、そのせいでいじめられた。孤立したが、いじめを無視することでいじめっ子に抵抗した。無言の反抗だ。幼い頃から、私は反抗心を燃やすことを覚えた。いじめには決して取り合わなかった。

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