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ドジャース大谷翔平が「経済学的には非効率」でも成功する理由

OHTANI AND ADAM SMITH

2025年10月28日(火)11時30分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)
大谷は「経済学の父」スミスに「ノー」を突き付けている KIRBY LEEーIMAGN IMAGESーREUTERS

大谷は「経済学の父」スミスに「ノー」を突き付けている KIRBY LEEーIMAGN IMAGESーREUTERS

<アダム・スミスが『国富論』で示した「分業こそ生産性の源」という思想。それに異を唱えるかのように、投打の二刀流で頂点を極める大谷翔平は、効率では測れない人間の可能性を体現している>


▼目次
アダム・スミスが説いた「分業の力」
アダム・スミス以前の世界に生きる「二刀流」

大谷翔平は、アダム・スミスに「ノー」を突き付けた。

野球ファンなら誰もが知ってのとおり、18世紀のイギリスに生きたスミスは「経済学の父」と呼ばれる人物。1776年の著書『国富論』では、分業が生産性を高めると主張した。

実際、その後の2世紀半の間、分業の恩恵により世界の国々の経済は目覚ましい発展を遂げてきた。

もちろん、言われなくても分かっている。野球ファンが実際に関心を持つのは、大谷に本塁打が出るかどうかだろう。

アダム・スミスが説いた「分業の力」

試合中にアダム・スミスを思い出す人はまずいない。けれども、私は大谷の人並み外れた「二刀流」のプレーをテレビで観戦しているとき、スミスのことを、スミスと野球の指名打者(DH)制の関係のことを考えずにいられない。

私が愛するボストン・レッドソックスが属するアメリカン・リーグがDH制を採用したのは1973年のこと。攻撃を活性化することが狙いだった。

当時の米球界は、極度の投高打低の時代。子供時代の私が毎晩ラジオで野球中継に夢中になっていた68年は「投手の年」と呼ばれた。

この年、私のヒーローだったレッドソックスの外野手カール・ヤストレムスキーは2年連続で首位打者になったが、打率は3割0分1厘止まり。アメリカン・リーグの平均打率は2割3分7厘というお粗末な成績だった。

こうした状況の下、各チームの打線を強化するべくDH制が導入された。それと引き換えに、私や父のような筋金入りのファンは、「僅差の試合の7回の攻撃で得点圏に走者が進んだとき、好投している先発投手に代打を送るべきか」などと作戦を議論する楽しみを奪われた。

球団オーナーたちが恐れていたのは、貧打が続いてファンが減り、収益が減ることだった。DH制の導入は、攻撃の活性化という期待どおりの効果を発揮した。

DHの通算平均打率は2割6分2厘。投手の通算平均打率(1割7分4厘)よりはるかに高い。近年のアメリカン・リーグの平均打率は(一時よりは落ち込んでいるものの)2割4分を超えている。

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