スパイ映画はこれで「復活」した...『ブラックバッグ』が描き出す、世界一危険な「職場恋愛」の心理劇
State of Love and Trust

「制御された混沌」の達人
こうした人間関係の力学をさらに複雑にしているのがクラリサだ。彼女は周囲のベテラン諜報員と違って、欺瞞が単なる戦術ではなく、職務に不可欠な要件であるという現実と葛藤する。
「クラリサは、人を信用しないという概念をどうしても受け入れられない」と、演じるアベラは語る。「この業界は疑心暗鬼に満ちている。自分が嘘をつかれていると知りながら受け入れる。最も親密な相手も嘘をつくのだ。クラリサにはそれがとても苦しく感じられて、相手から無理に反応を引き出し、恋愛に誠実さを求めたがる」
物語を通じて、安全と傷つきやすさというテーマが複数の人間関係で展開される。登場人物は、それぞれが相手の行動が本心なのか戦略なのか、見極めなければならない状況に追い込まれる。
『ブラックバッグ』は諜報の世界をスタイリッシュに描いているが、サイバー戦争と世界的な不安定が蔓延するこの時代に、不気味なほど現実味を帯びている。情報の流れを掌握する者に権力が集中することを、観客は改めて思い知らされる。
物語が現実の不安をどのように捉えているかについて、ファスベンダーは次のように語る。
「世界ではあまりにも多くのことが起きていて、時に圧倒される。だからこそ人々は映画館にこういう作品を見に行く。裏で実はこんなことが起きているのか、ニュースでは見えないところで物事が動いているのだ、と」
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