最新記事
映画

『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではない...これぞ究極のコメディー映画だ!

John Wick, Comic Hero!

2025年8月22日(金)15時40分
イモゲン・ウェストナイツ

お決まりの展開が大切

『バレリーナ』でも、その点は変わらないどころか強化されている。イヴが別の登場人物をテレビのリモコンで容赦なく殴る場面では、後ろに置かれたテレビの画面が、キートンの映画や三ばか大将のコメディー、そしてやはりコメディー映画の『フライングハイ』(アクション映画の『スカイ・ハイ』ではない)へと次々と切り替わる。

『ジョン・ウィック』シリーズが究極のコメディーだという事実は、アクション映画としての素晴らしさの理由にもなっている。普通なら「やりすぎ」を恐れて二の足を踏むところ、『ジョン・ウィック』では、むちゃくちゃなことでもとことんやってしまうからだ。イヴは小さなアイスリンクで、次々に襲ってくる敵をスケート靴のブレードを武器に返り討ちにする。


物語世界を構築してある種のリアリティーをつくり出そうとする際も、描写は薄っぺらい。ここにもコメディーの要素がある。「主席連合」が実際にどう機能しているかなんてどうでもいいのは製作側も承知の上だ。それより大事なのは「コンチネンタル(ホテル)の中で仕事はご法度だ」というせりふが必ず登場するということなのだ。

ウィンストンはラテン語のせりふを口にしながらマティーニをちびちびと飲むし、ストリートミュージシャンは隠し持っていた拳銃をバイオリンから取り出そうとする。そしてウィックはほんの15秒で10人以上の敵を倒し、「ああ」とか「そうだな」といういつものせりふを口にする。こうしたお決まりの展開こそが大切で、笑いを呼ぶのだ。

©2025 The Slate Group

FROM THE WORLD OF JOHN WICK: BALLERINA
バレリーナ:The World of John Wick
監督/レン・ワイズマン
主演/アナ・デ・アルマス、キアヌ・リーブス
日本公開は8月22日

ニューズウィーク日本版 健康長寿の筋トレ入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月2日号(8月26日発売)は「健康長寿の筋トレ入門」特集。なかやまきんに君直伝レッスン、1日5分のエキセントリック運動

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スペースX「スターシップ」、打ち上げ延期 地上シス

ビジネス

米ウェイモ、NY市で自動運転タクシー試験走行の許可

ワールド

ノルウェー、ウクライナに7億ドル相当の防空システム

ワールド

米銀、州の権限弱める全国統一基準働きかけ=情報筋
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 3
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 6
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    株価12倍の大勝利...「祖父の七光り」ではなかった、…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中