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アメリカに初めて「ゴッホの絵画」を輸入した男...2500点の名画を集めた大富豪バーンズの知られざる「爆買い人生」

SHOPPING FOR A MUSEUM

2025年4月17日(木)15時00分
ブレイク・ゴプニック(美術評論家)

10年がたちコレクションが800点を超えても、バーンズには目標があった。1922年4月30日に鉛筆で走り書きした一種の「やるべきことリスト」には、「300万ドル相当のコレクションを収めるにふさわしい建物を造る」とある。

ロンドンのウォレス・コレクションのような邸宅美術館をモデルに「特定の日に特定の制限を設けた上で一般公開する」と、バーンズは構想した。リストには美術館を運営するために財団を設立し、数百万ドルの国債を買ってその資金に充てるとも書かれていた。


そのうららかな春の日、100年をかけて大きな実を結ぶプロジェクトが始動した。

22年10月末までにバーンズは財団をつくって膨大なコレクションを寄贈し、700万ドル相当の国債と株式を寄付した。寄付金の大部分は自分の製薬会社の持ち株を譲渡する形で賄った。

そして煩雑な法律関係の手続きが片付いた12月4日、バーンズは「バーンズ財団」が晴れてペンシルベニア州政府により正式に承認されたことを発表した。

彼は「教育の発展および美術鑑賞の促進」を目指し、「ペンシルベニア州モンゴメリー郡ロウアーメリオン郡区に古代から現代にまで至る美術品を展示するためのギャラリーその他必要な建物を建設し、設立し、維持する」と表明した。

こうしてバーンズの壮大な冒険が幕を開けた。ここからバーンズ・コレクションは単なる「美術館」の域を超え、当時の美術界もバーンズ本人も想像しなかった規模と影響力を誇る存在へと成長していった。

Adapted from The Maverick’s Museum. Copyright © 2025 Blake Gopnik. Published by Ecco, an imprint of HarperCollins Publishers. Reprinted by permission.

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