最新記事
語学学習

「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル時代の新たな英語観「ELF(エルフ)」とは

2025年4月2日(水)18時05分
瀧野みゆき(社会言語学者、中公新書『使うための英語』著者)

今もっている英語の「知識」を積極的に活用する
今まで学んできた英語の知識を効果的に使う方法を考え、実際に英語を使う経験をできるだけ増やすことで、英語の知識を「使う力」に変えていく。

英語を使いながら学び、必要なことは足していく
最初から英語が使えると期待せず、まず使ってみる。足りない部分は自分で調べたり練習して補足し、よりよい使い方をめざす。この、「使う、学び足す、また使う」の繰り返しで英語力を伸ばしていく。

こうした ELF発想で英語を学び、実践することが、これからの時代に求められるスキルである。英語を「正しく話す」ことより、「相手に伝え、理解する力」を意識することが、グローバルな場で活躍する第一歩となる。


伝わりやすい英語の作り方:英語表現の型を使ってみよう

そこで、ELFの発想で英語を練習し・使い、仕事などで必要な場面で「伝わる英語」を話す方法を考えてみよう。

英語を話し始めると、自分の話し方にいろいろ不満を感じることがあるだろう。

「自分が考えていることが十分に言えない」
「説明の要領がよくない」
「聞き手が分かってくれているか不安」
「日本語なら自然に話せるのに、英語では言えない」

こうした悩みは、多くの英語学習者が抱えるものだ。特に仕事では、日本語での表現力に比べて英語での話し方が下手に感じ、不安やもどかしさを覚え、「英語だと自分の仕事力が下がる」と思ったりする。

こうした課題に直面すると、語彙の強化や英語表現の暗記など、もっと英語を勉強するしかないと思いがちだ。ネイティブのように英語を使おうと思えば、そうなるだろう。しかしELF発想では、「今もっている英語力」を効果的に使って、誰にでも分かるように英語を使うことを工夫することをまず考える。

そのために重要なのが、「英語の話の構成」を見直すことだ。これはどんな英語レベルの人でもすぐに実践できて、英語のスピーキングの上達に直結する方法である

そもそも、日本語を母語とする私たちが日本語で話す時も、「分かりやすい構成」は重要だ。日本語の「伝える力」に関する本でも、よく「話の構成」が強調される。英語も同じで、伝える力を高めるには構成が大切であり、英語圏の学校では、日本以上に、話の組み立て方を重視して教える。

だからこそ、英語をノンネイティブとして使う私たちが、英語の話の構成のルールを知り、それを応用して英語を話すことは、相手に英語で伝える力を伸ばすカギとなる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 6
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 7
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 8
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中