最新記事
語学学習

「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル時代の新たな英語観「ELF(エルフ)」とは

2025年4月2日(水)18時05分
瀧野みゆき(社会言語学者、中公新書『使うための英語』著者)

一方、グローバル化が進む現代、実際に英語を話している人の約75%はノンネイティブであり、英語を使う場面の多くは、ノンネイティブ同士やノンネイティブが多く参加するコミュニケーションである。そこで使われる英語は、語彙、表現、流暢さ、アクセントなど、ネイティブの英語とは大きく異なるが、ノンネイティブの英語ユーザーたちは、巧みに英語を使い、ビジネス、政治、学問、社会貢献など幅広い分野で活躍している。

多様な相手と英語でコミュニケーションをするには、英語の使い方・学び方の優先順位を変える必要がある。「ネイティブのように話すこと」を目標にするよりも、次の3つを意識する方が効果的だ。


誰にでも分かりやすい英語を使う
誤解を生まない伝え方をする
相手の文化や背景を考慮する


これは、世界中の多くのノンネイティブがすでに実践している方法だ。私たちもこのELFの視点に切り替え、英語を「使うための英語」として学ぶべきではないだろうか。

ELFの考え方がもたらすメリット

ELFの視点を持つことで、英語を使うことへのハードルが下がり、より的を絞った英語学習が可能になり、それぞれの使う場面に適した、実践的なコミュニケーション能力が身につく。特にビジネスの現場では、仕事の目的をかなえるために「明確に伝わる英語」が重要なので、ELFの考え方は有効である。

具体的には、次のような学習アプローチが有効だ。

自分の目的に合わせて英語を学び、使う
漠然と「ネイティブのような英語」を目指すのではなく、自分が英語を使う場面を具体的にイメージし、そのコミュニケーションに必要な英語のスキルを優先して学ぶ。これによって、限られた英語の学習時間を効果的に使える。

シンプルで伝わりやすい英語を使う
難しい表現や高度な語彙を使おうとするより、分かりやすく、誤解を生まない英語を心がける。特にノンネイティブの多いELFの環境では、簡潔で明確な英語の方が理解されやすい。

多様な英語とすり合わせて英語を使う
様々なアクセントや話し方に慣れ、相手の英語を柔軟に理解し、自分の伝え方も適応させる力を養う。ELFの現場では、完璧な英語よりも「伝わる工夫」が求められる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 10
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中