最新記事
軍艦島

ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の超過密空間のリアル「島の社交場」として重宝された場所は?

2025年1月15日(水)16時43分
風来堂 (編集プロダクション)*PRESIDENT Onlineからの転載

さまざまな世代が集う共同浴場は島民たちの社交の場

海底水道ができるまでは、給水船で水を運んでいたため、渴水時や時化(しけ)の際には海水が利用されたが、基本的には真水を沸かして使用していた。

台風などで海が荒れると真水の利用は中止されたが、各家庭で真水のかかり湯を自宅から持参し、共同浴場に向かったという。水が貴重な資源であったからこそ、島民全員が節水に取り組んでいたのだ。

1957(昭和32)年に海底水道が開通すると、島では人浴時間のいつでも真水を沸かした風呂に入れるようになった。

個別の風呂があったのは、鉱長社宅の5号棟、職員のクラブハウス(集会・宴会場)の7号棟、旅館の清風荘など、ごく一部に限られていた。1959(昭和34)年に建設された3号棟には、各戸に室内風呂があつた。これは、鉱長社宅以外では島内唯一のアパートだった。

共同浴場は、8号棟の山間にある窓がついた明るい上風呂と、61号棟の地下にあり大人が20人近く入れる広さの下風呂、それから31号棟の地下風呂の他に、60号棟にも共同浴場があった。


共同浴場の入浴料は無料、いつも多くの人で賑わっていた

鉱員とその家族は共同浴場を無料で利用でき、入浴時間は午後3時〜午後8時までと定められていたため、いつも多くの人であふれかえっていた。軍艦島中の人間が、島内で数えるほどしかない風呂に指定された時間内で入るというのだから、風呂の混雑がどれだけのものか想像できる。

ちなみに、住宅棟の浴場は女子風呂の脱衣所のほうが広かった。これは、島内に住んでいる労働者のほとんどが鉱員のため、共同浴場を利用する男性は鉱員以外の高齢者か子どもたちのみだったからだ。

しかし、どれだけ風呂が芋洗い状態であっても島の社交場として重宝されていた。社交場として活用していたのは大人だけでなく子どもたちも同じ。学校帰りに「○時に下風呂に行くよ」などといった約束を交わしていたというエピソードも残っている。

newsweekjp20241223113618-aede0f67fe36ef9866b7860711648639b57f2384.jpg風来堂『カラーでよみがえる軍艦島』(イースト新書Q)(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米雇用4月17.7万人増、失業率横ばい4.2% 労

ワールド

カナダ首相、トランプ氏と6日に初対面 「困難だが建

ビジネス

デギンドスECB副総裁、利下げ継続に楽観的

ワールド

OPECプラス8カ国が3日会合、前倒しで開催 6月
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    金を爆買いする中国のアメリカ離れ
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中