最新記事
映画

「次世代のトム・クルーズ」と話題のイケメン俳優、大スターの教訓は「難しそうに演じろ」?

The Secret to Being a Star

2024年6月26日(水)13時53分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)
『ヒットマン』の場面写真

イケメン俳優として知られるパウエルだが、新作では「イケてない」大学教授が偽の殺し屋になる複雑な役柄に挑む PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS VIA NETFLIX-SLATE

<端正なルックスで順調にキャリアを積んできたグレン・パウエル。『トップガン マーヴェリック』で主演を食う勢いを見せた注目俳優が、新作主演映画『ヒットマン』で大化けの予感>

メディアは長年、グレン・パウエルを「次世代の大物」、ハリウッドの新スターに仕立てようとしてきた。だが彼は「あの男」、つまり『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』のナンパ男、『セットアップ』のアシスタントと、映画ファンに呼ばれる立場からついに抜け出せないでいた。

だが『トップガン マーヴェリック』で、彼は主演のトム・クルーズを食ってしまいかねない生意気な魅力を発揮。準主役を演じた若手俳優を差し置いて、「次世代のクルーズ」として注目を集めた。


この映画に出たおかげで、パウエルはクルーズが映画作りについて語る6時間の映像を特別に見ることができた。スターになるコツがそこに含まれていたかは不明だが、パウエルの最新の主演作『ヒットマン』(日本公開は未定)を見ると、クルーズからとても重要な教訓を学んだことが分かる。

それは「難しそうに演じろ」だ。

見た目は苦労なしのイケメンで、10代のときに『スパイキッズ3-D』で映画デビューして以来、順調にキャリアを積んできたパウエル。

だがイケメンであれば映画ファンが夢を託すペルソナ(仮想人格)になれるわけではない。独特の持ち味、唯一無二のオーラが必要だ。そこが映画スターとインスタグラムのインフルエンサーの違うところ。

スターは美形か、少なくとも個性的なルックスでなければならないが、ただ「イケてる」だけではダメだ。

誰もが運転を覚えるよりも先に、自分のキメ顔を覚えるこの時代、イケてるルックスなんて売るほどある。それでも『恋するプリテンダー』のパウエルとシドニー・スウィーニーほどビジュアル抜群のカップルはちょっと想像できない。

この映画は興行的な出足は今イチだったが、徐々に人気が出て世界的なヒット作になった。おかげで次世代のスターとしてパウエルを推す声が初めて説得力を持った。

だが同作の中身は期待外れだ。理由は映画の中ではパウエルもスウィーニーも弱さを見せないこと。恋愛ものの傑作には、カップルが互いを必要とする依存的な要素がちょっとだけ必要だ。

けれども依存は弱さにつながり、弱さは将来の二枚目スターがまず見せたがらない要素でもある。結果、パウエルもスウィーニーも負け知らずの格闘家ばりに全く隙を見せない。

観客の心を揺さぶるのは、無残に打ちのめされ、傷だらけで立ち上がるヒーローであり、全てのパンチを巧みにかわす無敵のヒーローではない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止 働き手不

ワールド

米連邦最高裁、中立でないとの回答58%=ロイター/

ワールド

イスラエル・イラン攻撃応酬で原油高騰、身構える投資

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中