最新記事
MLB

「アメリカ人よりアメリカ的」...大谷翔平の「後払い契約」にみんな惚れてしまった理由とは?

Who Bets Against Gods?

2023年12月18日(月)14時07分
サム・ポトリッキオ(本誌コラムニスト、米ジョージタウン大学教授)

ポストシーズンを勝ち抜く確率がリーグ史上最も高く、アジア系住民が多い西海岸に本拠地を置くチームで今後もプレーすることで、野球以外の収入が急増することは確実だ。

昨年のスポンサー収入が4000万ドルとも言われる大谷が、メディア露出が多い名門チームでプレーするのだ。

野球以外の収入は年間6000万~8000万ドルに達すると予想される。ドジャースがワールドシリーズで優勝すれば、スポンサー収入は1億ドルの大台を軽く突破しそうだ。

そして最後に、この男は人間の心理にも精通している。大谷はこれまで悪役を演じたことが一度もない。

「神」への逆張りは禁物

前所属のロサンゼルス・エンゼルスは、負けを嘆いたり悲しんだりするレベルのチームではなかった。

それが近年で最も圧倒的な強豪チームに移籍したというのに、ネットの話題をさらった今回の契約に対する世間の最初の反応は、チームの財政状況に配慮して報酬後払い方式を選択したことへの賛辞だった。

NBAのレブロン・ジェームズが「スーパーチーム」のマイアミ・ヒートに移籍したときは、マイアミ以外の全米ほぼ全てから猛バッシングを受けた。

要するに「そんなことをしてまでタイトルが欲しいのか」という批判だったが、大谷に関してはこの手の意見はあまり聞こえてこない。

ただし、今回の契約は恐ろしく大がかりな「手品」でもある。大谷は、けがでシーズン終盤を棒に振った選手と巨額契約を結ぶリスクを目の前から消してみせた。

実際、桁外れの契約を正当化する論拠の柱は次のようなものだ──大谷は投打の両方で殿堂入りレベルの選手。つまり、2人の殿堂入り選手と同等なのだから、誰かの2倍の金額で契約する価値がある。

問題は右肘の大手術を受けたばかりなので、2024年シーズンは登板しない可能性が高いことだ。けがの深刻さを考えると、大谷は投手としてこれまでと同様には投げられない可能性もかなりある。

ニューヨーク・メッツは毎年7月1日を「ボビー・ボニーヤの日」と呼んで嘆く。メッツは数十年前のこの日、ボニーヤに毎年100万ドル以上を支払う契約を結んでしまったからだ。

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米テスラ、カリフォルニア州で販売停止命令 執行は9

ワールド

カナダ、北極圏2カ所に領事館開設へ プレゼンス強化

ワールド

香港トップが習主席と会談、民主派メディア創業者の判

ワールド

今年のシンガポール成長予想、4.1%に上方修正=中
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中