最新記事
世界が尊敬する日本人100

上野千鶴子、性差別論が中国で爆発的ブーム...「おひとりさま」に共感も

Chizuko Ueno

2023年8月18日(金)13時00分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
上野千鶴子のイラスト

ILLUSTRATION BY KYOJI ISHIKAWA FOR NEWSWEEK JAPAN

<中国で「上野ブーム」が巻き起こったきっかけは? 本誌「世界が尊敬する日本人100」特集より>

村上春樹や東野圭吾など中国で人気の日本人作家は多いが、新たに上野千鶴子がその1人に加わった。2022年に7冊、23年(7月末時点)は新訳を含め8冊もの翻訳書が出版されており、累計発行部数は70万部を超えたと報じられている。

「爆紅(爆発的人気)」とまで言われる中国の上野ブーム、きっかけとなったのは19年の東京大学入学式の祝辞だ。大学にも社会にもあからさまな性差別が横行しているとの指摘は、中国でも大きな反響を呼んだ。

17年にアメリカから始まった、セクハラや性差別を告発する#MeToo運動は中国でも広がりを見せたが、中国共産党は「西側敵対勢力による分断工作」として取り締まる姿勢を示している。こうしたなか、主に日本の問題を指摘しているため検閲を擦り抜け出版を許されている上野の著作は、フェミニズムに共感する人々にとってのバイブルとなった。

それだけではない。フェミニズムを知らない女性にも支持者は多いようだ。価値観が多様化し、結婚を求める親や親族の圧力をはねのけて1人で生きようとする女性が増えつつある中国では、「子供の代わりにペットを家族に」「単身者のための料理セット」など、単身経済は成長産業だ。いかに検閲を強化しようとも社会の変化は止められない。「おひとりさま」提唱に共感した上野ブームは、そのシンボルとなっている。

上野千鶴子
Chizuko Ueno
●社会学者

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


東京アメリカンクラブ
一夜だけ、会員制クラブの扉が開いた──東京アメリカンクラブ「バンケットショーケース」で出会う、理想のパーティー
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

フォード、アマゾンで中古車販売開始 現代自に続き2

ワールド

トランプ氏、メキシコ・コロンビアへの麻薬対策強化支

ビジネス

午前の日経平均は大幅続落、一時1200円超安 ハイ

ワールド

国連安保理、トランプ氏のガザ計画支持する米決議案を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中