最新記事
映画

アニメ版スパイダーマンの超絶破壊力...カギは多様性、あらゆるタイプのスパイダーマンが登場!

IP Cinema Reimagined

2023年6月21日(水)13時00分
サム・アダムズ(スレート誌映画担当)

スパイダーマンが本来のマーベルの仲間たちと活躍する映画を作れるようになったのは、よかったのかもしれない。だが、映画製作という面から見ると、やや残念な状況が生まれている。

これまで独特の良作を世に送り出してきた監督たちが、有名なフィギュアの入ったおもちゃ箱を渡されて、「さあ、これで何か作って」と言われているのだ。ただし、独自の世界観を表現することには大幅な制限がかかる。なにしろ、与えられたフィギュア(キャラクター)には、既に強力なストーリー(と知財権)が絡んでいるからだ。

『レディ・バード』などでアカデミー賞に3度ノミネートされたグレタ・ガーウィグが監督した『バービー』がいい例だろう。『ムーンライト』で素晴らしい映像美を見せたバリー・ジェンキンス監督は、『ムファサ:ザ・ライオンキング』(仮題)でCGを駆使してジャングルの掟を描く。

『バービー』も『ムファサ』も、ガーウィグとジェンキンスがこれまで手がけてきた作品よりも、はるかに多くの観客を集めるに違いない。だが、そのために彼らが芸術的に大きな妥協をしたのではないかと勘繰らずにいられない。

問題は、優れた監督たちが大作を手がけるようになったことではなく、映画会社が「知財権を保有するキャラクターをうまく料理した大作」という新しいジャンルにしか関心を示さなくなったことだ。

この「知財シネマ」の世界では、良質なストーリーは必ずしも重要ではない。動画配信サービスなどの興盛で大量のコンテンツがあふれるなか、映画会社にとって重要なのは、著名キャラクターの認知度を借りて、少しでもチケットの売り上げを増やすことなのだ。

アニメならではの自由度

この状況を逆手に取って、むしろクリエーティブで感動的な作品を次々と生み出してきた映画人もいる。『21ジャンプストリート』や『LEGOムービー』の共同監督を務めたフィル・ロードとクリストファー・ミラーの2人組がいい例だ(『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』では、ディズニーの最も価値あるキャラクターの1つであるハン・ソロを奔放に描きすぎて途中でクビになる憂き目に遭ったけれど)。

ロードとミラーは、『スパイダーバース』シリーズの脚本や製作として参加しており、何度も描かれてきたスパイダーマンの物語をきっちり描くと同時に、映画会社の貴重な財産をいじりすぎないこと、という限界を試している。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中