頭空っぽで楽しめるエンタメ映画はオスカーを取れるのか?──ノミネートだけでも栄誉の『トップガン』
Can Maverick Win?
アカデミーの会員構成は若返りが進み、より多様で国際的になりつつある。そうした進化は作品賞にも反映されるだろう。無邪気な正義よりも曖昧さを、スペクタクルよりも小粒さを、ノスタルジーより未来を好むアートシアターの精神に基づき、小規模でシリアスな映画を作品賞に選ぶ傾向は今度も続きそうだ。
だが望みがないわけではない。1929年、第1回アカデミー賞で作品賞に輝いたのは、空中戦が画期的なアクション大作『つばさ』だった。
『つばさ』を見直すと、1世紀近く前に考案された空中戦の演出が古びていないことに驚かされる。同時に私たちを泣かせ、考えさせ、常識に疑問を抱かせるだけでなく、わくわくさせるのも映画の身上なのだと再認識させられる。
暗い映画館の客席で驚きのあまりポップコーンを取り落とす喜びを大切にする映画産業は、スペクタクルの力を侮ってはいけない。
この1年、『トップガン』以上に観客を楽しませた映画はない。作品賞にふさわしいかどうかは別として、ノミネートの知らせを聞いた私は空母の甲板でクルーズのようにサングラスを夕日にきらめかせ、みんなとハイタッチを交わしたい気分になった。