最新記事

フィギュアスケート

「呼吸一つでさえも、芸術」多くの人を救う、羽生結弦の演技の魅力とは?

2022年11月4日(金)08時06分
ヒオカ(ライター)

jpp020387973-20221025.jpg

「圧倒的結果を出し続ける帝王たる羽生くんも、やっぱり結果を見るときはこんなにドキドキしてしまうんだなぁ。人間味溢れる羽生くんも素敵!」(ヒオカ氏談) 『羽生結弦 アマチュア時代 全記録』117頁より ©時事通信


私はこんなに美しい音楽を知らない。
私はこんなにも繊細で複雑な表現を知らない。

どこかノスタルジックで、感傷的で切ない感情が胸をかすめる。胸がきゅーっとなって苦しい。しかし、その切なさのあとに、霧が晴れたように、心が澄み渡り、やわらかい光が差し込んでくる。心にしみ込んでくる、心をふっと優しく包んでくれる、そんな何かに触れた気がした。

彼の演技を見るたび、こんな世の中でも、こんなに素晴らしいものがあるのなら、生きていてよかった、とさえ思えてくる。

間違いなく、彼の演技は多くの人を救っている。

プロに転向した今、彼はますます自由に表現を追求し、多くの人を魅了しているように見える。一般的にアマチュア時代が現役と言われ、その期間がピークと言われる。

でも、そんな常識は、彼はぶち壊す。

いや、軽やかにすり抜けて、彼は彼の世界の常識で生きている、というほうがしっくりくる。彼はどんな枠にも既存の概念にも当てはまらない存在。羽生結弦は、羽生結弦であり、それ以外のなにものでもないのだから。

後日談

この原稿を書いている時、羽生くんのプロ転向後初のアイスショー「プロローグ」の先行抽選結果が来た。

結果は、"もちろん"、全落ち‼

だってプロ転向後初のアイスショーですよ? 一人で最初から最後まで演技するんですよ?そりゃあみんなみたいよね‼‼‼‼ 当選する望みは限りなく薄いであろう。そんなことはわかっていたし、必死に心の準備もした。でも、仕事中に落選メールがきて、しばらく放心状態。仕事が手につかず、上司にもドン引かれるくらいの気の落ちようだった。

実は私、生で羽生くんを見たことがない。映像でもこんなに泣いて、圧倒されるのだから、生で見たら、本当に倒れてしまうかもしれない。

いや、もういっそう、倒れたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ

ワールド

フィリピン、大型台風26号接近で10万人避難 30

ワールド

再送-米連邦航空局、MD-11の運航禁止 UPS機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中