最新記事

韓国ドラマ

韓国の「検察の闇」問題に迫る犯罪サスペンス『秘密の森』、緻密な脚本を手掛けたのは新人脚本家だった

2021年4月30日(金)19時10分
柾木博行
韓国ドラマ『秘密の森』のペ・ドゥナ(女性刑事ハン・ヨジン役)とチョ・スンウ(検事ファン・シモク役)

女性刑事ハン・ヨジン(ペ・ドゥナ)と検事ファン・シモク(チョ・スンウ)が疑惑を解き明かす社会派ドラマ『秘密の森』。Netflixでシーズン1配信中、シーズン2独占配信中

<主人公は幼少期に脳手術を受けて感情を失い、理性のみで行動する冷徹な検事。上司の汚職を探っていた彼は――。脚本のイ・スヨンは3年かけて検察関係者に取材。シーズン2も高視聴率を記録している>

2019年に多くの不正疑惑で話題になった韓国の曺国(チョ・グク)元法相。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が彼を起用したのは、強大な権力を持つ検察組織の改革のためだった。

『秘密の森』は、こうした韓国社会の抱える問題を扱った硬派な犯罪サスペンスだ。

ソウル西部地検の検事ファン・シモク(チョ・スンウ)は幼少期に脳手術を受けて感情を失い、理性のみで行動する冷徹な男。上司の汚職を探っていた彼が贈賄側の自宅を訪ねると、男は死体となっていた。

女性刑事ハン・ヨジン(ペ・ドゥナ)と一緒に容疑者を追跡・拘束したものの、それは検察や警察、財閥が癒着する「秘密の森」に仕掛けられた罠の始まりだった──。

巨大財閥グループ「ハンジョ」の会長イ・ヨンジェ役のユン・セア

巨大財閥グループ「ハンジョ」のイ・ヨンジェ(ユン・セア)は『秘密の森』シーズン1、2を通じて警察、検察に圧力をかける。Netflixでシーズン1配信中、シーズン2独占配信中

黒幕の存在のほか、検察と警察の立場を超えて協力し、ストイックに捜査に突き進むシモクとヨジンの関係も気になるところ。

一つ言えるのは、脚本のイ・スヨンは甘い夢物語でなく、自らを厳しく律し不正を追及する者が必ずいるという夢を紡ぎ出したことだ。

驚くのはこれが彼女のデビュー作である点。3年かけて検察関係者に取材したという。次作の『ライフ』では、大学病院の暗部に切り込む医療ドラマで高評価を得た。『秘密の森』シーズン2も、彼女の緻密な脚本に支えられ高視聴率を記録している。

『秘密の森』(2017~)
出演/チョ・スンウ、ペ・ドゥナ、ユン・セア、イ・ジュンヒョク、ユ・ジェミョン
Netflixでシーズン1配信中、シーズン2独占配信中

(※韓国を飛び出し、世界で支持を広げ続ける「進撃の韓流」――本誌5月4日/11日号「韓国ドラマ&映画50」特集より。本誌では、さまざまなジャンルの注目ドラマ20作品を取り上げています)

202104_kiji_k-dramamovie_campaignbanner.jpg

*『ライフ』の内容説明に誤りがあったので修正しました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルのミサイル、イランの拠点直撃 空港で爆発

ビジネス

日経平均は1100円超安で全面安、東京エレクが約2

ワールド

イスラエルのイラン報復、的を絞った対応望む=イタリ

ビジネス

米ゴールドマン、24年と25年の北海ブレント価格予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中