最新記事

カルチャー

対談:柳井正×佐藤可士和、「UT」「+J」「ビックロ」......2人の対話が生み出してきたもの

2021年2月13日(土)12時15分
写真:河内 彩 文:高瀬由紀子 ※Pen Onlineより転載

定例の打ち合わせを終えたばかりのふたり。「いつもミッション・インポッシブルばかりだよね(笑)」と柳井。「そのおかげで、だいぶ鍛えられました」と佐藤が応える。

<ファーストリテイリングを率いる柳井 正と、日本を代表するクリエイティブディレクターの佐藤可士和。かけがえのないパートナーであり、盟友であり、週に一度はミーティングを重ねるふたり。Pen BOOKSに収録された対談の完全版をここに公開!>

2006年、ユニクロの本格的な海外進出となったニューヨーク旗艦店のプロジェクト以来、揺るぎないパートナーシップを築いてきた柳井 正と佐藤可士和。一般的なクライアントとクリエイターという間柄を超えた信頼関係で、数々のビッグプロジェクトを実現し、ユニクロを世界的なブランドへと導いてきた。そんなふたりが、改めてこれまでの道のりを振り返った。出会いのきっかけから最新の取り組み、さらに今後のビジョンまでを存分に語り合ってもらった。

15年前に初めて会って、すぐに仕事がはじまった。

pen20210212satokashiwa-2.jpg

初めてのプロジェクトとなったユニクロのニューヨーク旗艦店のことを、「いまでも忘れられないし、新しい店をつくるたびに初心に返る」とふたりは声を揃える。

佐藤 柳井さんと初めてお会いしたのは、もう15年も前。僕のデザインしたNTTドコモの赤い携帯電話を見て、ユニクロのグローバルブランド戦略を依頼しようと思われたそうですが、いま振り返ってもすごいご決断だなと。

柳井 あれは、いまでも欲しくなるデザインだね。時代を超えた、完成されたプロダクトだと思います。当時、僕は携帯電話を持ってなかったんだけど、すぐ買いましたから(笑)

佐藤 改めて、なぜ気に入っていただけたんでしょうか。

柳井 能力のある人が、ものすごく集中して完成させたんだろうなというのが、ひと目で伝わってきた。クライアントに迎合せず、それでいて我を通さず、相手が欲しているものを的確に表現できるのが真のクリエイターだと思うんです。このデザインを見てピンときて、少しお話しした後に「可士和さん、すぐお願いします」って言いました。いま思えば、よく引き受けてくれたよね。

佐藤 ニューヨーク旗艦店のディレクションの依頼でしたが、オープンまでの期間が9ヶ月くらいしかなくて。いま考えると、ぞっとしますね(笑)

柳井 本当に(笑)よくやり遂げてくれたなと感謝しています。

pen20210212satokashiwa-3.jpg

「可士和さんは、客観的かつ論理的に考える力と、デザイナーとしての感性が同居しているところが素晴らしい。ドコモの携帯電話には、それが明白に現れていますね」と柳井。

佐藤 確かに大変でしたけど、同時にものすごくワクワクしました。自分たちが日本代表として、世界に打って出るんだという使命感があって。

柳井 1000坪もの店を短期間でゼロからつくる訳だから無理難題なんだけど、無事オープンを迎えられたのは、可士和さんが経営者に近い感覚を持っていることも大きいと思う。自分だけのアイデアに固執せず、世界じゅうの才能をキャスティングして、強力なチームとして機能させたのは見事ですね。

佐藤 それは、柳井さんが引き出してくださった能力だと思います。他にも色々なポテンシャルを引き出していただいて、自分で言うのも何ですけど、かなり成長できたなと(笑)

柳井 クライアントとクリエイターが、お互いに高め合える関係であることが一番いいよね。可士和さんの場合、僕が思っていた以上のものをつくり上げてくれる。でもそれは、よく考えたら自分が思っていたものなんです。だから、クリエイターはクライアントの中にあるものを具体化する、翻訳家みたいなもの。いいクリエイターは、そこにプラスアルファの付加価値を足せる人ですね。

<参考記事>【佐藤可士和のクリエイションの秘密】前編:本質的な価値を伝える、「アイコニック・ブランディング」とは。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

林官房長官が政策発表、1%程度の実質賃金上昇定着な

ビジネス

アングル:FRB「完全なギアチェンジ」と市場は見な

ビジネス

野村、年内あと2回の米利下げ予想 FOMC受け10

ビジネス

GLP-1薬で米国の死亡率最大6.4%低下も=スイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中