最新記事

ポストコロナを生き抜く 日本への提言

『深夜食堂』とこんまり、日本人が知らないクールジャパンの可能性

COOL JAPAN 2.0

2020年5月4日(月)10時25分
カン・ハンナ(タレント・歌人・国際文化研究者)

これが日本らしさだと支持される小林薫主演の『深夜食堂』 COURTESY NETFLIX

<これらはたまたまヒットしたのではないし、アニメ・漫画・ゲームだけが日本の強みでもない。外出できず世界が苦しむ今こそ、日常の中にある日本のカルチャー・コンテンツが必要だ。本誌「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より>

片付けコンサルタントの近藤麻理恵(こんまり)さんが書いた本『人生がときめく片づけの魔法』が世界40カ国で翻訳出版され、ネットフリックスのドキュメンタリー『KonMari~人生がときめく片づけの魔法~』も世界で大ヒットを果たした。
2020050512issue_cover_200.png
ドラマ『孤独のグルメ』と『深夜食堂』は、私の母国の韓国や中国、台湾など東アジアを中心に大人気となり、肉じゃが、豚汁、だし巻き卵、お茶漬けなど日本の家庭料理が新ジャンルとして注目を集めた。レシピ本も次々と出版されている。

これらはたまたまヒットしたのではない。実は片付けや日本の家庭料理が支持を集めた現象の中に、今後のクールジャパンにおける大きなヒントが隠れている。

10年ほど前から日本文化に興味を持ち、短歌を詠むなど深く学び続けてきた私から言わせてもらうと、日本にはカルチャー・コンテンツの宝がたくさん眠っている。私はいつもその無限の可能性に感銘を受けているが、残念なのは日本人がその可能性にまだ気付いていないことだ。

日本ではアニメ、漫画、ゲームが日本独自のコンテンツであると、その価値を認められている。確かにこれらは優れたサブカルチャーとして世界各国に熱狂的なファンを持ち、素晴らしい結果を出している。でも私が注目したいのは、日本の日常の中から生み出されるコンテンツだ。実は、海外の人々からすれば、日本人は普段何を食べて、何を見て、何を考えて、何を大事にしているのかが一番興味深いところなのだ。

こんまりのヒットにはさまざまな理由があるが、その中でも「片付けは人生を変える」「セラピー効果のある片付け術」などのメッセージが大きな役割を果たした。『深夜食堂』の場合は日本人が持つ「人情」が新鮮に映り、海外の人たちはこれこそが見たかった日本らしさだと言う。実際私も『深夜食堂』を見て、ベールに包まれていた日本の素顔が見れた気がしてうれしかった記憶がある。

つまり、いま世界が求めている日本のカルチャーはそこまで難しいものではないということだ。

【参考記事】こんまりの魔法に見る「生と死」

「お金になる」は悪くない

ところで、クールジャパン関係の方たちと話す機会があるのだが、私にはひとつ気になることがある。それはカルチャーがお金になるという発想に対する受け止め方だ。「お金になるのもいいですけど、カルチャーがビジネス色に染まることを作り手が好まないかもしれなくて......」などと戸惑う。しかし、今や文化産業が持つ付加価値が無視できないほど大きいということだけは伝えたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米GDP、第2四半期改定値3.3%増に上方修正 個

ワールド

クックFRB理事、トランプ氏を提訴 独立性と大統領

ビジネス

ECB、インフレ巡り意見分かれる 関税やユーロ高も

ビジネス

ECB、インフレ巡り意見分かれる 関税やユーロ高も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 3
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に侵入してきたクマが見せた「目を疑う行動」にネット戦慄
  • 4
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 7
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中