最新記事

韓国社会

BTSを抜いた! 2019年韓国で大ブレイクした新人スター「ペンス」とは?

2019年12月9日(月)19時00分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

ASEANサミットの広報で康京和外交部長官と共演

newsweek_20191209_190115.jpg

ASEAN特別サミットの広報で外交部長官と共演。대한민국외교부 / YouTube

ペンスを一気に有名にしたのは、歯に衣着せぬその性格にある。自らの所属するEBSのキム・ミョンジュン社長を呼び捨てにし、さらにはMBC、SBS、JTBC、KBSと他局の番組にも次々と出演。出演先の各社の社長の名前ですら呼び捨てでネタにするなど、一般的な芸能人だったら恐れ多くて出来ないであろうことを、10歳という設定年齢と着ぐるみを通して可能にした。

これまで韓国では内輪ネタとも取れるテレビ側の事情を織り交ぜてキャラクターが喋ることはなかったので、新鮮味があり面白い。これが子供たち以上に成人男女から人気を集める秘密だろう。さらに、人気を集めるきっかけになったのがTV放送だけでなくYouTubeチャンネルだったという点も新しい。TVと個人動画の垣根が低い若い世代にとって、YouTubeからの人気がいかにブームに火をつけやすいか象徴しているとも言える。

これほどまでに人気が出ると、放送以外の分野にもペンス人気が広がってきた。グラビア写真を含む特集を載せたファッション雑誌NYLON(12月号)は完売し、ペンスのエッセイ集『今日もペンス、明日もペンス』は、販売開始3時間で売り切れた。LG、ロッテ製菓、ロッテリアを含む各企業とのCM契約が続々進行中であり、ついには政治の世界でも活躍の場を広げ、今年11月末に釜山で行われた「2019ASEAN特別サミット」の広報映像にも出演した。まさに、ここ数か月で目覚ましい活躍ぶりだ。

ペンスの影響で南極ツアーに人気

興味深いところでは、韓国人がペンスの出身地とされる南極への関心を高めている点だ。オンライン旅行社トリップ.comの発表によると、今年の南極ツアーの予約が昨年比1.8倍へと増加しているという。さらに、ちょうどペンスの人気が高まってきた9月からのサイト訪問者をデータ分析すると、南極への航空券検索者数はおよそ227%と倍増した。

トリップ.comは、「最近のペンス・シンドロームは、文化コンテンツが実際の旅行にインスピレーションを与えている良い例の一つだ」と語っている。日本映画『Love Letter 』(岩井俊二監督)が韓国で大流行した後、北海道を訪れる旅行客が急増するなど、もともと韓国人は日本人同様、ロケ地を巡る「聖地巡礼」する文化は少なからずあったが、キャラクターがきっかけとなって、遠く離れた南極への旅行にまで影響を与えているとは驚きである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ミャンマー内戦、国軍と少数民族武装勢力が

ビジネス

「クオンツの帝王」ジェームズ・シモンズ氏が死去、8

ワールド

イスラエル、米製兵器「国際法に反する状況で使用」=

ワールド

米中高官、中国の過剰生産巡り協議 太陽光パネルや石
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中