最新記事

映画

過剰だけど美しいギャツビーの世界

2013年6月21日(金)14時38分
デーナ・スティーブンズ(脚本家)

 原作で記憶に残るイメージやシーンは、ここぞとばかりに再現される。巨大な目を描いた眼科医の古看板、ギャツビーが次々に放り投げてデイジーを泣かせる高級シャツ(3D映像ではシャツが客席へ飛んでくる)。

 この「芝居っ気たっぷり感」にうんざりすることが何回もあった。初めてギャツビーの顔が映し出されるとき、その後ろには夜空の花火、流れるのはガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」......。

説明がくどいシーンも

 それでも凝った映像には目を見張らされる。原作ではニックがパーティーで窓の外を見ながら「尽きることのないさまざまな種類の生活に魅せられた」と思う場面を、マンハッタンのビルの窓に変えたのはうまい。

 ディカプリオほどギャツビー役にふさわしい俳優はいないと思う。少年ぽさや、無邪気にカネと社会的地位を追い求める姿を巧みに表現し、キャサリン・マーティン(ラーマン監督の妻)が担当した豪華な衣装で観客を魅了する。

 とはいえ説明がくど過ぎるシーンもある。ギャツビーが指輪をした手を緑色の灯に向かって伸ばす場面では、ご丁寧にも、「謎めいた隣人が対岸の桟橋に輝く緑の灯に向けて手を伸ばすのを見た」というニックのナレーションが重なる。

 デイジーとギャツビーよりも、ギャツビーとニックの関係のほうが生き生きして説得力がある。マリガンはデイジーを演じるには繊細過ぎたのかもしれない。映画の最終部分で、デイジーは冷酷で「自分しか愛せない」面を見せつけるのだから。

 拾い物は、ジョーダンを演じたオーストラリア出身のエリザベス・デビッキだ。原作でニックは彼女を、「素敵なイラストのように気取ってあごを少し上げ、髪は紅葉のようだ」と言う。デビッキには、この描写にふさわしい落ち着きがある。

 彼女が画面に現れると騒がしさが一瞬収まる。この熱っぽくて説明だらけの映画にも、つかまえどころのない人物がいるのはほっとする。

© 2013, Slate

[2013年6月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ストライプ、ペイパルの買収か一部事業取得検討か=ブ

ビジネス

米EVルーシッド、第4四半期損失が予想上回る

ワールド

米、ヨルダン川西岸入植地でパスポート業務提供へ

ワールド

米上院議員、ウクライナ支持決議案提出 トランプ氏一
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 8
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中