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映画にタバコはいらない

うまそうな「一服」シーンはスクリーンから駆逐すべきか、映画は「現実」を反映するべきか

2010年10月8日(金)14時47分
クロディア・カルブ(医療・健康担当)

 最近の映画の喫煙シーンはハンフリー・ボガートが活躍した時代ほど多くない。それでも09年公開のPG13指定(13歳未満の観賞には保護者の注意が必要)映画の54%に喫煙シーンがあった。

 今年1月、『アバター』のジェームズ・キャメロン監督は、カリフォルニア大学サンフランシスコ医学校教授スタントン・グランツに公開の場でけんかをふっかけられた。グランツが『アバター』で植物学者がたばこをふかすシーンは「上水道にプルトニウムをぶち込むようなもの」と、ニューヨーク・タイムズ紙に語ったのだ。
 
 キャメロンは同紙上で、シガニー・ウィーバー演じるこの科学者を青少年のお手本にしようとしたつもりはない、と反論した。だが「喫煙シーンは許されないというのは独善的な考え。映画は現実を反映するべきだ」とも主張した。

 最近はアメリカ政府が喫煙シーンと戦うグランツを後押ししている。8月19日、疾病対策センター(CDC)は疾病率・死亡率週報に91年から09年のヒット映画についてグランツが調べた統計を載せた。それによると、喫煙シーンはピーク時だった05年の4000件から劇的に減り、09年には2000件を切った。

 それでもCDCの全国慢性病予防健康増進センターのアーシュラ・バウアーによれば、アメリカでは毎日12歳から17歳までの4000人がたばこを吸い始める。「若者は映画などのメディアで喫煙シーンを見てたばこを吸い始める」と、バウアーは言う。

 CDCは「映画の喫煙シーンの悪影響を減らすために効果的な方策を取らなければならない」という立場を取っている。この厳しい表現はグランツにとって力強い味方だ。「CDCが具体的な方策レベルまで言及したのは初めて」と、グランツは言う。

 米国立癌研究所の08年の報告など多くの研究から、映画の「一服」シーンが若者の喫煙を促すことが分かっている。連邦議会も公聴会を開いたし、07年には大手映画会社数社が若者向けに分類された映画で喫煙シーンを奨励しない社内方針を採用した。

 しかしグランツやWHO(世界保健機関)が求めるのは、若者向け映画での喫煙シーン根絶とたばこが登場する映画をR指定(17歳未満の観賞には保護者同伴が必要)にすること。喫煙シーンは「ヌードや汚い言葉を使うのと同じ。作りたければ作ってもいいが、子供向けは認められない」と、グランツは言う。

 この基準が導入されれば、『食べて、祈って、恋をして』や『ソルト』もPG13からRに変更される(ただし歴史上の人物の喫煙シーンは例外的に許可される)。

喫煙のない映画は高収益

 格付けシステムを変更すれば若者が見る喫煙シーンは半減する、とグランツは予測する。それに映画にたばこを登場させないほうが儲かる。05年の調査によればR指定映画の投資利益率は29%しかないが、PG13は44%、PG(子供に見せる前に親が内容を検討すべき)は73%もあった。

 CDCの報告に対し、映画を格付けする全米映画協会(MPAA)は「ニコチンには中毒性がある。子供の喫煙を望む親はいない」とコメントしている。MPAAによれば、07年5月以降「少しでも喫煙シーンが出てくる」映画の73%がR、21%がPG13、6%がPGに指定された。

 キャメロンは映画は現実を反映すべきだと言った。だがグランツは反論する。映画が描くたばこの妖しい魅力やかっこよさ、セックスアピールは喫煙の現実ではない。中毒性やいらいら、たばこが原因の病気や死こそが現実だと。

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