最新記事

テレビ

コテコテお姉キャラの功罪

ゲイのキャラクターが次々と登場しているが、権利拡大に逆効果?

2010年1月19日(火)14時52分
ラミン・セトゥデ(エンターテインメント担当)

艶っぽい 『アメリカン・アイドル』シーズン8の準優勝者アダム・ランバート Phil McCarten-Reuters

 9月に米FOXテレビでスタートしたドラマ『グリー』は、高校の合唱部を舞台にしたゲイ色たっぷりのコメディー。先日のエピソードでは、ミュージカル『ウィキッド』のナンバー「自由を求めて」で部員たちが競い合う。合唱部のディーバ、レーチェルに対抗するのは......男性版ディーバ(で若き同性愛者)のカート(クリス・コルファー)だ。

 アレキサンダー・マックィーンがデザインしたふわふわのセーターを着たカートは、見事な高音を響かせる。ビヨンセの「シングル・レディース」を歌うときは、本人よりも激しく腰を振る。

 芯の強さと率直さもカートの魅力。息子がゲイであることを受け入れられない父親との緊張感漂うシーンには心を打たれる。

 こんなにもいとおしいカートだが、視聴者を困惑させることもある。合唱部が男女に分かれたとき、彼は迷うことなく女子チームへ。カートが性同一性障害ならうなずけるが、そうではない。彼はただ同性が好きな繊細な男の子だ。

 もちろんゲイであることはちっとも悪くない。同性愛者の抵抗運動の始まりとなった40年前のストーンウォール事件以来、ゲイ社会は自分が好きな人を愛する自由だけでなく、ありのままの自分でいる自由のために闘ってきた。

 テレビもこれに協力した。97年、女優エレン・デジェネレスはレズビアンであることを公表。ドラマで演じていた役にもカミングアウトさせ、多くのゲイキャラクターが登場するきっかけをつくった。

 翌年にはドラマ『ドーソンズ・クリーク』にジャック(カー・スミス)が登場。ゴールデンタイムでカミングアウトしたティーン第1号かもしれない。同年に始まった『ふたりは友達? ウィル&グレイス』には、奔放なお姉キャラのジャック(ショーン・ヘイズ)とエリート弁護士のウィル(エリック・マコーマック)がいた。

同性婚容認の流れは後退

 テレビに出てくる同性愛者のタイプは次第に多様になっていく。ダサい男を改造するリアリティー番組『クイア・アイ』のゲイ5人組や、ドラマ『Lの世界』のレズビアンたちがいい例だ。

 テレビのおかげもあって、ゲイはメインストリームの仲間入りをした。ある調査では、過去5年間で同性愛者に好意的になったという人の約3分の1が、テレビのキャラクターが一因だと答えている。

 しかし最近は、同性愛者容認の流れが後退しているようだ。カリフォルニア州最高裁は5月、同性婚の禁止を決めた昨年の住民投票を有効とする判決を下した。11月にはメーン州でも、同性婚の合法化が住民投票で覆された。

 とはいえ、これはテレビの責任ではない。ポップカルチャーの使命は人々を楽しませることであり、お説教することではない。それでも『グリー』のカートのように露骨な「お姉キャラ」が増えたことが、反発を呼んでいるのかもしれない。

『アグリー・ベティ』にはケバいアシスタントのマーク(マイケル・ユーリー)が、『アントラージュ★オレたちのハリウッド』には気取った秘書ロイド(レックス・リー)がいる。デザイナー発掘リアリティー番組『プロジェクト・ランウェイ』は金切り声を上げる同性愛者だらけだ。

 11月23日には『アメリカン・アイドル』シーズン8の準優勝者アダム・ランバートのデビューアルバム『フォー・ユア・エンターテインメント』が発売された。ジャケットのランバートはマスカラをたっぷり付け、ネイルは黒、唇はグロスで輝いている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中