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『Dr.パルナサスの鏡』が描く奇想天外ワールド

2010年1月29日(金)13時52分
小泉淳子

----パルナサス博士が導く鏡の向こうの世界では、悪魔が薦める欲望の道か、節度ある道のどちらかを選択することになる。あなたならどちらに進む?

 私の経歴を見れば明らかだろう(笑)。いつだって困難を伴う道を選ぶ。学習しないんだ。何が起きるか分からないほうが面白い。私は強迫観念症なんだ。退屈なのが嫌いでね。休暇は耐えられない。何もせずにリラックスなんて、退屈極まりない。退屈と戦うために仕事をしているようなものだ。家でも映画の話ばかりするので、妻には嫌がられている。家族の話をしましょうよって。
 
----『Dr.パルナサスの鏡』はイギリスやカナダ、フランスの共同制作だが、今のハリウッドの問題はどこにあると思う?

 アメリカのカネが絡まない「きれいな作品」なのが自慢だ(笑)。最近のハリウッドは奇妙なことになっている。映画会社は1億ドルを超える制作費の掛かる超大作か、1000万ドル以下でできる小規模な作品のどちらかしか手を出さない。1000万ドル以下の予算では、コメディーやちょっとした恋愛物くらいしか撮れない。

 あるいは『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『アバター』のように巨額の制作費を掛けたものになってしまい、その中間の作品がない。低予算の映画はどれもテレビ映画程度の出来で、劇場で上映するのに値しないような代物ばかりだ。一方コストの掛かる超大作では、リスクを避けるために似たようなストーリーばかりを語っている。

----今回の作品ではハリウッドの映画会社の呪縛から逃れて、自由に撮れた?

 そうとも。ワインスタイン兄弟からの解放だ!(注:前作『ブラザーズグリム』はハーベイ・ワインスタインが会長を務めていたミラマックスの作品)。もっともこれはカネの問題ではなく、人間関係の問題だがね。
 
----あなたの作品にはコンピュータ技術は欠かせないが、技術の進化によって失われたものはあると思う?

 これまで難しかったイメージを映像化できるという点で、コンピュータには感謝している。だが問題は、それに頼り過ぎている作品が多過ぎるということだ。若い人には3Dは楽しい体験かもしれないが、私は年を取った。3Dは必要ない。確かに『アバター』の映像は美しいが、ストーリーは目新しくないし、想像力を刺激されない。物語に入り込む余地がないんだ。私ならすべてを説明しないで、観客を迷路に誘い込むさ。(『アバター』の監督)ジェームズ・キャメロンは自分のやりたいことをやり、私は私のやりたいことをやる。

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