最新記事

株の基礎知識

バブルを生きた元証券ウーマンが振り返る日経平均の30年、そしてこれからの「3万円台の世界」

2021年5月12日(水)12時25分
岡田禎子 ※株の窓口より転載
日本人女性

写真はイメージです Yagi-Studio-iStock.

<現在、多くの人の保有株は大して上昇しておらず、バブルの実感などないはず。日経平均株価は今、30年前のバブル期とはもはや「別物」になった。明るい材料も暗い材料もあり、大きな変化があった>

世の中みんなバブルだった

「日経平均株価、本日も最高値を更新しましたー」

威勢の良い声とともにドッと拍手が沸き起こる──これは、30年前のとある証券会社でのワンシーン。日経平均株価は1989年11月に36,000円を超えると連日のように高値を更新、急ピッチで駆け上っていきました。

その様子を、実際の株式相場の中から眺めていた筆者。日本中が文字どおり沸いていた空気を、懐かしく思い出します。そんなバブルから再び3万円台をつけるまでの30年間を振り返ってみます

■証券会社もキラキラしていた30年前

2021年2月、日経平均株価が30年ぶりに3万円台をつけました。「バブル再来か?」との議論も市場に飛び交い、現役の若い世代は初めての経験で戸惑っている、とも聞きます。

しかしながら、30年前のイケイケドンドンの時代を経験した筆者からすれば、今とは空気感が全く違うと感じてしまうのです。

前回の3万円台をつけた当時、東京株式市場は「強い日本経済」を背景に高成長し、1988年にはニューヨーク証券取引所の時価総額を抜いて世界最大の市場に成長。1989年の年末には、日経平均株価は38,915円87銭と史上最高値をつけました。

kabumado20210512-30yrs-chart1.png

筆者が証券会社に入社したのは、まさにバブル絶頂期の1989年の4月。デザイナーズブランドの制服に身を包み、茅場町のお洒落な本社ビルで「ソバージュ」の髪を振り乱して、慣れない仕事に奔走していました。

先輩女子たちは、父親より多いかもしれないボーナスをもらい、夏の旅行はハワイかヨーロッパ、週末は会社の保養所に泊まりがけでテニスに行ったり、決算明けには上司に新宿高層ビルのお洒落なピアノバーに連れていってもらったり。

毎日残業で仕事はキツイけれど、ちゃんと人生も謳歌している。そんな彼女たちはキラキラと眩しく見えました。ここで頑張れば私もそうなれる......と本気で信じていました。

■NTT上場で加速した「財テク」ブーム

バブルだったのは証券会社だけではありません。

1987年のNTT(日本電信電話<9432>)上場で一般の人を巻き込んだ「財テク」と呼ばれる投資ブームが加速し、日本中が株式投資に熱狂していました。

ここに、当時の新聞記事があります。


農業を営むAさんが営業マンにソニー株を勧められ、100万円の利益を手にした。Aさんの株式投資成功の極意は「営業マンと親しくすること」。営業マンの心を掴むコツは誠意を見せること、ノルマに困っていたら僅かでも買ってあげるなど親しくすることで耳寄りな情報を持ってきてくれるようになる──

今でこそ金融庁に怒られそうな話ですが、つまり、そういう時代だったのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中