最新記事

プレゼンテーション

名門MBAケロッグの名物教授、初めてのプレゼンは「ニワトリの洗い方」だった

2019年10月9日(水)19時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ニワトリを育てた経験のある人なら、正しい体のつかみ方があることを知っているだろう。羽の上から両手で押さえて、やさしく持ち上げる。こうすると、ニワトリは羽ばたけないことをすぐに悟り、暴れるのをやめておとなしくなる。そうなれば、向きを変えながらニワトリの体を調べることができる。この場合で言えば、体を洗えるようになるわけだ。

それ以外の形でニワトリの体をつかむのは、すべて間違いになる。脚や尾、あるいは片方の羽だけをつかんだりすれば、散々なことになってしまう。とにかく両方の羽を押さえないといけない。ニワトリは身の危険を感じ、羽をばたつかせて逃げようとするからだ。特に白色レグホン種は驚いて暴れやすい。

私は箱の中に手を伸ばしながら、プレゼンのことが少し心配になり、流れを立て直そうとした。プレゼンの時間は数分で、審査員が時計を見ていた。私は手を伸ばしてニワトリの白い尾をつかみ、箱から引っ張り出した。そして......騒動が始まった。

ニワトリは絞められるのだと思って羽をばたつかせ、私の顔や胸をくちばしでつついてきた。ほこりと土が舞い、白い羽根が辺り一面に飛び散った。私は片手で尾をつかんだまま、取り逃がすまいと必死だった。観客席の人たちは、一体どうなるのかと身を乗り出していた。私は暴れるニワトリを片手でつかんだまま、冷静にプレゼンを続けようとした。

「ニワトリの体をしっかり押さえるようにすることがとても大事です。そうしないとパニックを起こして羽をばたつかせます。このニワトリのようにです」

白い羽根が舞い飛び、ニワトリが大声で鳴くなかで、私は話を続けた。

「ニワトリが落ち着くまでに時間がかかることもあります」

ニワトリ相手の悪戦苦闘は、まるで何時間も続いたように思えた。責め苦のようだった。しかし、そのうちにようやくニワトリも疲れ果て、私は両手で羽を押さえてつかむことができた。私は安心して、こう続けた。

「ニワトリをおとなしくさせれば、あとは流しに入れるだけです」。私は石鹼水の入ったバケツにニワトリを入れた。「刺激の少ない石鹼を使うのを忘れないようにしてください」

すると、ニワトリはチャンスを悟り、また逃げ出そうとした。私の片手が滑って外れ、ニワトリは羽をばたつかせた。そして、またドタバタ。今度は水が飛び散り、私はびしょ濡れになってしまった。最終的に、私はなんとかニワトリを押さえて体を洗い、母のヘアドライヤーを使って体を乾かした。

「体をしっかり乾かすことが大事ですが、ドライヤーの使い方に気をつけてください。熱くなりすぎてしまうことがあります。中温がベストです」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中