最新記事

キャリア

ハーバードの「キャリア相談室」で涙を流すエリートたちを見て...

2018年10月12日(金)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

だがカプラン教授はカウンセラーでもなければ、相談に来た人たちも教授の教え子というわけでもない。上の営業部長は、共通の友人から「相談に乗ってやってほしい」と頼まれたことが話を聞いたきっかけだという。

教授の専門は経営実務で、ゴールドマン・サックスに勤めていた22年間を通じて、さまざまな管理職を歴任した。当時から、会社の若手・中堅だけでなく同僚やクライアントなど数多くの人にコーチングを行ってきた。その後、ハーバード大学のMBAプログラムではリーダーシップ講座を担当している。

そんなカプラン教授の研究室には、学生だけでなく社会人までもが次々と訪れ、さながら「キャリア相談室」のように、キャリアや人生について相談していくらしい。

その経歴から、カプラン教授のもとを訪れるのはアメリカのエリート層、つまりは、世界の超エリートたちだ。どんなときでも自信満々に見える彼らだが、教授の研究室では、時には涙を流しながら悩みを打ち明けるのだという。

他人が「成功」だと言うものを鵜呑みにすると、心は満たされない

エリートに限らず多くの人が人生に行き詰まり、「自分は何をしたらいいか分からない」と悩む要因のひとつは、周囲のアドバイスに耳を傾けて、その期待に応えようとするからだと教授は指摘する。

周囲の目を気にしがちな日本人ならいざ知らず、アメリカ人の、しかもエリートでもそうなのか......と驚く人は多いだろう。だがカプラン教授によれば、エリートというのは特にそうした傾向が強い人々らしく、だからこそ、ある時点で唐突に壁にぶつかってしまう。

だが、「成功する」あるいは「夢を叶える」ためには、そもそも自分にとって何が「成功」であり、どうなることが「夢」なのかを定義しなくてはならない。他人が「成功」だと言うものを鵜呑みにすると、たとえそれを手に入れたとしても、心は全く満たされないまま人生が終わってしまう。

では、どうすればいいのか? 本書の原題は「What You're Really Meant to Do(あなたが生まれもった使命)」という。「使命」とは少々大げさに思えるかもしれないが、言い換えれば「自分を知る」ということだ。

その第一歩として本書では、自分の長所と短所を知るところから始める。つまり、「何ができて、何ができないか」だ。というのも、意外にも、自分の長所と短所を理解していない人は多いらしい。なぜなら、それを掘り下げて考えたことがないからだ。

ある大手メーカーの若手マネージャーは、上司に対して不満を抱き、公平な扱いを受けていないことにイライラして、教授の研究室にやって来た。彼もまた、自分の短所が分からなかった。というよりもむしろ、彼のスキルを評価するのは上司の仕事であり、会社の役目だと思っていたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中