最新記事

教育

日本のビジネススクールは行く価値があるか?

2018年3月20日(火)15時25分
松野 弘(千葉商科大学人間社会学部教授)

さらに、2000年に専門職大学院としての国際企業戦略研究科が一橋大学で最初の入学生を迎え、名古屋商科大学、青山学院大学と、ビジネススクールが次々とつくられることになった。その他にも早稲田大学、明治大学、法政大学、中央大学といったように、まさにビジネススクールの百花繚乱である。

これはすでに述べたように、企業活動のグローバル化の進展に対応した国際的人材の育成という大学側の経営上の思惑でもある。

ただし、欧米のビジネススクールはグローバルな企業戦略を基本としたカリキュラム体系であるが、日本の場合、グローバルなビジネス環境を参考にしながらも日本企業の経営風土を軸とした教育を行っているのが日本型のビジネススクールの特徴である。

多元的なビジネス価値を基盤とした欧米のビジネススクールと、一元的なビジネス価値を教育の基本としている日本のビジネススクール。いずれに学ぶ価値があるだろうか。

過渡期のビジネススクール――高等職業専門学校か、大学院か

英国の有力高等教育評価機関、クアクアレリ・シモンズ(QS)は毎年、世界のビジネススク-ルのランキングを発表しているが、最新の「QS Global MBA Rankings 2018」によれば、1位ハーバード、2位INSEAD、3位HEC パリ、4位スタンフォード、5位ロンドン・ビジネススクールとなっており、アジア勢では、上海(中国)のCEIBSが28位、香港大学が38位、シンガポールの南洋理工大学が42位となっている。

日本のビジネススクールは141-150位に早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)、151-200位に名古屋商科大学ビジネススクールがやっと登場している。慶應義塾大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)が登場していないのは不可思議だが、本来なら早稲田とはほぼ同等以上にランクインされるはずである。

こうした大学ランキングは、世界でさまざまな機関が毎年異なる基準で発表しているので、これが信頼できるものとは正確にはいえないが、総じて、日本のビジネススクールは欧米の超一流のビジネススクールよりも評価されていないということは確かだ。その大きな要因の1つは、日本のビジネススクールは教育と研究の質が相対的に低いことにある。

例えば、欧米の場合、ビジネススクールというMBA(修士課程)のレベルであっても、正規の専任教員はすべて博士号を保有している。企業経験があるからといって、ビジネススクールの教員として採用しているのは日本のビジネススクールだけだ。これではまるでビジネススキルを身につけさせるための高等職業専門学校のレベルである。

ちなみに、日本のビジネススクールでトップクラスと称されている慶應義塾大学ビジネススクールと早稲田大学ビジネススクールの教員の学位取得を比較してみると、(1)慶應義塾大学の専任教員(27名)がすべて博士学位(海外・国内の大学院)を保有しているのに対して、(2)早稲田大学の場合、専任教員49名のうち博士学位取得者は37名で、博士号取得率は約75%である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

モンゴル首相、就任4カ月で辞任 議会が不信任

ビジネス

午後3時のドルは約2週間ぶり149円台へ下落、米地

ワールド

SNS監視でビザ取り消し、米主要労組が政権提訴 表

ビジネス

SMBC、イエス銀行への出資比率引き上げ否定=イン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    間取り図に「謎の空間」...封印されたスペースの正体…
  • 5
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 6
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 7
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    ホワイトカラーの62%が「ブルーカラーに転職」を検討…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中