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岸谷蘭丸が「内容は当たり前、なのに背中を押された」と評する40万部ベストセラーの正体

2026年1月13日(火)18時00分
酒井理恵 (ライター)

岸谷蘭丸

写真:遠藤宏

「本を読んだ分だけゲームOK」幼少期に培った交渉力

海外留学のエキスパートでもある岸谷さん。『新版 20歳のときに知っておきたかったこと』の冒頭には、スタンフォード大学で行われている授業の一部が紹介されている。学生が2時間以内に元手の5ドルを増やすというものだが、岸谷さんは「そういう授業ばかりではない」と語る。

「スタンフォード大学は人的リソースがあまりに潤沢すぎる特殊な環境です。『このペンを私に売ってみなさい』のような授業はフィーチャーされやすいですが、海外にも日本人と変わらない講義をする先生もたくさんいますよ。

ただ中高で言えば、アメリカの先生のほうが学生とのコミュニケーション能力が優れていると思います。先生は憎まれる存在ではなく、一人の人間として付き合える存在。それが学生の力になっています」

一方、日本の教育の利点は意外にも「詰め込み型教育」だという。

「アメリカは100万人の凡才よりも1人の天才を生み出すような教育が特徴です。イノベーションを起こすにはいいかもしれませんが、中学までの教育は、日本は本当に優れていると思います。

中学校くらいまでの最も吸収する時期に土台となる教養や知識、考える力を養うことは大事ですね」

そうした学校での学びとは別に、彼自身が家庭で養っていたのが、欲しいものを手に入れるための「交渉力」だ。

本書でも新しい自転車がほしいと言い出した息子に対し、著者が「私たちが半額を払ってもいいと思わせる方法を提案してみて」と伝えるエピソードが紹介されている。こういった「取引」は、岸谷さんの家庭でも頻繁に行われていたという。

例えば、母親との間で交わされた契約が、「本を読んだ分数(自己申告)だけゲームをしてもいい」というものだ。最初はゲームをするために本を読んでいたが、気づいたら本のほうが面白くなり、「ゲームをしていい分数だけが貯まっていった」と岸谷さんは振り返る。

入り口は「ゲームのため」という言い訳だったとしても、結果的に本質的な面白さに気づくことができた。自身の欲望に忠実であるがゆえに、自然と身につけた生存戦略の一つだったのかもしれない。

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