電車を太陽光で走らせるのは無理?...大阪メトロとパナソニックが新発電システムを実証実験

大阪メトロの森之宮検車場。手前の建物の屋根に太陽光発電パネルが見える Photo: Osaka Metro
<再エネ由来の電力を購入する方法ではなく、自家発電の再エネで電車を走らせることは可能なのか。大阪で「太陽光+純水素型燃料電池」の次世代発電が動き出している>
あらゆる産業で脱炭素化の取り組みが加速している。自動車や航空機と比べ、CO₂排出量が少ない鉄道も例外ではない。日本各地の鉄道会社が、電力会社から再生可能エネルギー由来の電力を購入するなどして「再エネ100%」の電車を走らせ始めている。
大阪では大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)が、電力会社の再エネプランを活用し、御堂筋線や中央線といった主要路線でCO₂排出量実質ゼロでの運行を実現した。車両の省エネ化やEVバスの導入も進めており、2030年までにグループ全体でCO₂排出量を46%削減(2013年比)する目標だ。
さらには名古屋大学と共同で、次世代太陽電池として期待されるカーボンナノチューブ電極を使った有機薄膜太陽電池の実証実験も行っている。将来、この太陽電池を使って電車やバスの窓で発電なんてこともできるかもしれない。
しかし、太陽光発電には天候に左右されるという弱点がある。公共交通機関としては「雨の日は走りません」というわけにはいかない。
そこで大阪メトロは、再エネの利用拡大と、自家発電による電力の安定供給に向け、パナソニック製の「太陽光+純水素型燃料電池」のシステムを導入した。昨年10月から、同社の森之宮検車場(大阪市城東区)で実証実験を行っている。
「将来的に、鉄道を走らせる電気としての利用を目指しています」と、大阪メトロ交通事業本部先進技術センターの納塚駿氏は言う。
このたび、実証実験の様子が報道陣に公開された。導入されているのは、合計100キロワット(kW)の太陽光発電パネルと、5kWの純水素型燃料電池が2台だ。発電量(2025年目標)は年間で太陽光が11万キロワットアワー(kWh)、水素が8000kWhとなり、一般家庭での電力需要の17世帯分に相当するという。