最新記事
アメリカ財政

アメリカ財政不安が一層募る...債券「自警団」出動も

2025年5月19日(月)14時57分
ワシントン

ムーディーズによる米国のソブリン格付け引き下げは、連邦債務上限という「時限爆弾」が迫る中で投資家の不安を一層募らせ、債券市場の「自警団」が米政府により厳格な財政規律を求める行動を起こす契機になるかもしれない。4月4日、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Leah Millis)

ムーディーズによる米国のソブリン格付け引き下げは、連邦債務上限という「時限爆弾」が迫る中で投資家の不安を一層募らせ、債券市場の「自警団」が米政府により厳格な財政規律を求める行動を起こす契機になるかもしれない。

主要格付け機関としての米格付けの最上級からの引き下げはムーディーズが最後で、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は2011年に、フィッチは23年にそれぞれ格下げに踏み切っている。


折しも米議会の上下両院で多数派を占める与党共和党は、2017年の第1次トランプ政権下で導入された「トランプ減税」の延長や各種歳出措置を盛り込んだ包括的な法案の可決を目指しており、成立すれば連邦債務はさらに数兆ドル(数百兆円)膨らむ恐れがある。トランプ大統領が打ち出した関税の行方については楽観的な見方も出ているが、この「大きく美しい一つの法案」に投資家は神経をとがらせている。16日に下院予算委員会が行った同法案の採決では、一部共和党議員の造反によって否決された。

BMPプライベート・ウエルスのチーフ市場ストラテジスト、キャロル・シュリーフ氏は「債券市場は今年になってからワシントンで起きている事象には特に厳しい目を向け続けている」と語り、ムーディーズの格下げで投資家の警戒度はもっと高まると予想する。

シュリーフ氏は、政府にお灸を据える目的で借り入れコストに途方もないプレミアムを要求する「自警団」と呼ばれる債券投資家たちは、大きく美しい一つの法案を巡る議会審議について財政運営の責任という面で不快感を持っており、今後も峻厳(しゅんげん)な姿勢を保つだろうとの見通しを示した。

トロウ・キャピタル・マネジメント創業者のスペンサー・ハキミアン氏も、ムーディーズの格下げで「最終的に米国では官民双方のセクターで借り入れコストが増大する」と警告した。

試写会
『おばあちゃんと僕の約束』トークイベント付き特別試写会 5組10名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

新ローマ教皇、米副大統領と面会 過去にトランプ政権

ワールド

台湾、WHO年次総会に招待されず 中国が反対

ワールド

ガザ空爆で20人死亡、食料搬入再開の発表後

ワールド

グリーンランド問題、中国はデンマークの主権を全面尊
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内にはっきり表れていた「重篤な病気の初期症状」
  • 4
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 5
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 6
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 7
    刺さった「トゲ」は放置しないで...2年後、女性の足…
  • 8
    実は別種だった...ユカタンで見つかった「新種ワニ」…
  • 9
    飛行機内の客に「マナーを守れ!」と動画まで撮影し…
  • 10
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 7
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 8
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 9
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 10
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中