最新記事
スポーツ

健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは

2024年12月2日(月)20時42分
満尾 正 (米国先端医療学会理事、医学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載
健康体の40代男性が突然、心筋梗塞で倒れた...マラソンや筋トレなどハードなトレーニングをする人が陥りやすい「過剰摂取のワナ」とは

Taiki Bansei -shutterstock-

<健康に気を使い、フルマラソンに参加するほどの体力を持っていた40代男性が、ある日突然心筋梗塞で倒れた----。検査の結果、注目すべきはある物質の値だった>

健康に過ごすためには、どんな食生活を送ればいいのか。

医師の満尾正さんは「タンパク質の過剰な摂取は、体の炎症を引き起こして命取りになる可能性がある。食べ過ぎも、食べなさ過ぎも『パフォーマンス低下』につながるので、気をつけたほうがいい」という──。

※本稿は、満尾正『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術[文庫版]』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。


栄養状態の検査は「今の自分を知る情報源」

これから栄養の最適化に向けた具体的な方法をお伝えしていきますが、正しく進めていくためには、定期的な現状把握も必要になります。

自身のパフォーマンスを維持するために、私は年に1~2回、栄養状態がわかる検査を受けることを強くおすすめします。

食生活は、すべて血液に表れます。自分は日頃、何が過剰で何が不足しているのかを見える化して、改善すべき点をあぶり出すための良い指標となります。

血液検査ならば会社の健康診断で受けているから大丈夫、という方も多いのですが、一般的な企業健診で行う血液検査は、私たちのような予防医療の専門機関で行うそれと比べて調べる項目が少な過ぎます。

また、一般的な人間ドックも同じく、検査の主眼は病気の有無を調べることにあります。心身の健康を高い状態に維持するためではありません。

一般的な人間ドックの検査項目といえば、血液や肝臓、腎臓、心臓や血圧、腫瘍マーカーや脂質代謝などです。

対して当院で行うアンチエイジングドックは、これらに加えてさらに体組織(筋肉と脂肪の分布)、骨密度、動脈硬化度、血液中のビタミン、脂肪酸、ホルモンの過不足や毛髪分析による有害金属の濃度などを検査しています。

これらは病気探しの検査ではなく、それよりも一歩先を見る、病気になりにくい体を目指すための状態検査です。

では、パフォーマンスアップのための血液検査項目とはどんなものなのか、もう少し詳しく説明していきましょう。

健康体の40代男性が突然、心筋梗塞で倒れたワケ

ホモシスティン

タンパク質の代謝過程で生まれるアミノ酸の一種。あまり知られていない物質ですが、体の大敵であり「悪玉アミノ酸」とも呼ばれています。血中ホモシスティン濃度が上がると動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中を招くこと、また認知症やがんのリスクも高まることがわかっています。

ジムでハードなトレーニングをする人、マラソンやトライアスロンなど負荷の高いスポーツをする人は、プロテインなどのサプリメントで多量のタンパク質をとることを習慣にしていると思います。しかし、タンパク質の過剰摂取は、ホモシスティンの原料であるメチオニンの摂取を増やすことから、ホモシスティン値を上昇させるリスクがあります。

私の知人の40代男性で、フルマラソンに参加するほど健康体だったのにもかかわらず、ある日突然、心筋梗塞で倒れた方がいます。

本人は日頃から健康には非常に気を使っていたので、心筋梗塞になった理由がわからないと、私のクリニックへ相談に来ました。血液検査をしたところ、コレステロール値や中性脂肪の値には異常は見られなかったのですが、ホモシスティン値は24nmol/mlと、理想値の3倍もありました。

試写会
『クィア/Queer』 ニューズウィーク日本版独占試写会 45名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

三井物産、26年3月期純利益は14%減見込む 資源

ワールド

旧称「スターリングラード」の復活、住民に決定権=プ

ビジネス

消費者態度指数、4月は23年2月以来の低水準 基調

ワールド

米、イランのフーシ派支援に警告 国防長官「結果引き
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中