最新記事
中国経済

トランプ前大統領「返り咲きの可能性」が人民元圧迫...投機売りやドル実需で

2024年10月25日(金)11時25分

ジェフリーズのグローバルFX責任者を務めるブラッド・ベッチェル氏は、トランプ氏が大統領に復帰し、共和党が上下両院で多数派を握れば、数カ月で人民元が最大12%下落する可能性があるとみている。

バークレイズのマクロ・FXストラテジスト、レモン・チャン氏は、今年第4・四半期のオフショア人民元は1ドル=7.10元前後と、6月以降の7.00─7.30元というレンジの中心で推移すると予想する。


 

外貨志向

中国債券の利回りが抑え込まれていることも、人民元の価値を損なっている。

期間10年の米国債利回りは、年2%に過ぎない同期間の中国国債の2倍に上る。

こうした中で中国の輸出業者や投資家は資産を外貨建てに維持。その一部は商業銀行の外貨預金として保有され、9月末時点では8490億ドルに増えた。残りは中国国有企業のドル建て債などの形で置かれている。

インベスコのポートフォリオマネジャー、イフェイ・ディン氏は、国内債利回りがオフショア債の利回りよりすっと低いので、国有企業のドル建て債に中国の買い手からの資金が流れ込んでいると説明した。

さらに米国が関税を引き上げる恐れがあり、人民元に先安観が広がる以上、中国企業は海外資産を急いで環流しようとしていない。

上海の電子部品輸出会社の所有者は、トランプ氏と関税の組み合わせは米金利上昇とドル高を意味すると述べ、香港に持つオフショア口座にあるドル預金をすぐに人民元に転換するつもりはないと明かした。

中国当局も、人民元安を好むように思われる。8月に人民元が一時8カ月ぶりの高値になった場面では、大手国有銀行がドル買いに動き、輸出収入の目減りを防いだとみられる。

IGの市場アナリスト、トニー・シカモア氏は、トランプ氏が大統領に戻って対中関税を約束通り60%に引き上げれば、中国にとってはまずい事態だと分析。「恐らく、だからこそ中国当局は前倒しで金融緩和に乗り出し、財政出動に言及しているのではないか。これらの関税が実行されれば、中国の経済成長には逆風となるので、衝撃緩和の要素が欲しいのだ」と付け加えた。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

パリ航空ショー、一部イスラエル企業に閉鎖命令 イス

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中