僕らは宇宙を「老化させる」ために生きている...池谷裕二が脳研究から導く「生きる意味」
1日目は、脳を顕微鏡のレベルでミクロに眺めたり、行動や精神のレベルからマクロに捉えたりして、脳の不思議さを紹介しました。2日目は、人工知能と脳の比較をしながら、脳独自の特徴とともに脳研究の意義を語りました。そのうえで、3日目にあたる第3章では、脳の挙動をとことん探究することで「私」という存在の真相を抉っていきました。
本書は約670ページと長大ですが、私なりの「脳観」を示すためには、このボリュームが必要でした。最後まで読んでくれた方の中には、「池谷さんにしか書けない、オリジナリティの高い本だね」とおっしゃる方がいます。解説書なので、何か新たな発見を書いたものではありません。ただ、説明に使うたとえや言葉に独自性があるのだと。身近な言葉なのに、その使い方が新鮮で意外性があるので、理解が深まりやすいのだと捉えています。
脳研究が導く「生きる意味」とは? 本書は、読者への「人生の応援歌」

──本書の中で、「脳について理解を深めて人生に活かしたい」と考えるビジネスパーソンに特に伝えたい内容はありますか。
生きていると、「人生の目的なんてあるのか」「なぜこんなに一生懸命働いているのだろう」などと、不安感やストレスに襲われることがあります。その感情に蓋をしているとモヤモヤが残っていく。本書は、そうしたストレスに対する免疫力をつけるための「人生の応援歌」でもあるんです。
──「人生の応援歌」ですか。
第3章で、「私たちは宇宙を老化させるために生きている」と書きました。宇宙のエントロピー増大の法則に則り、これを推し進めることで宇宙の老化を助けている。つまり、食事や呼吸、排泄などを行い、生きているだけで役に立っているんです。そこに虚しさを感じるかもしれません。ですが、私の場合は、生命の原理が「少なくとも価値があるんだよ」といっているのかと、ものすごく肯定された。どうせ生きるなら楽しく生きよう、と。
タイトルの『夢を叶えるために脳はある』にも二重の意味を込めました。一見「将来の夢を実現するために頑張ろう」というスローガンに見えるものの、読み進めると、「脳は所詮、仮想現実をつくり出しているだけ」という意味でもあると気づく。けれども、最後まで読み切ると、1周回って「生きているって意味がある」というメッセージに立ち戻れるようにという願いを込めました。
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