最新記事
中国経済

2024年、習近平が迫られる究極の選択 債務膨張か低成長か

2023年12月25日(月)15時24分

高度な職に就くために学んだ大卒者は今、低スキル労働に従事せざるを得ず、他の労働者らは賃下げの憂き目に遭っている。

不動産が家計資産の70%を占める中国にあって、住宅所有者は貧しくなっていると感じている。数少ない明るいセクターである電気自動車(EV)産業でも、価格競争がサプライヤーと労働者を苦しめている。

アナリストによると、国民に広がる悲観論は、習近平国家主席に社会不安のリスクを突きつけかねない。中国が日本型の経済停滞に陥っているのだとすれば、日本のような経済発展を達成する前にそうなってしまうということだ。

世界中の産業が中国のサプライヤーに大きく依存している以上、このことは幅広い影響を及ぼすだろう。アフリカと中南米は、中国がコモディティーを買ってくれて、工業化の資金を出してくれると期待している。

2024年はどうなる

中国が究極の選択を行うための時間はほとんど残されていない。

政策当局者は経済の構造改革に意欲を燃やすが、中国において改革は常に難しかった。

地方からの出稼ぎ労働者向けに社会保障を増やす試みは、社会不安とコストへの懸念から既に頓挫(とんざ)しつつある。出稼ぎ労働者が都市部住民と同様の公共サービスにアクセスできるなら、家計消費を通じてGDPを1.7%増大させるとの試算もあるのだが。

不動産および債務の問題を解決しようとする試みも、同様の懸念に突き当たっている。

つまり、失敗した投資の代償をだれが払うのか、という問題だ。銀行か、国有企業か、中央政府か、はたまた民間企業や家計か──。

エコノミストによれば、どの選択を採っても将来の成長率は押し下げられかねない。

中国は今のところ、改革のために成長を犠牲にする選択に及び腰なようだ。

政府の顧問らは、来年の成長率目標を5%前後とするよう求めている。これは今年と同水準だが、今年の成長率はロックダウンによって低迷していた前年と比較したものだ。来年はその効果が消える。

5%前後の目標を立てれば、債務を増やさざるを得ないかもしれない。ムーディーズは今月、そうした財政の緩みを理由に中国の格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げ、これを嫌気して中国株は5年ぶりの安値に沈んだ。

借りた資金を何に回すかによって、中国が姿勢を変化させているのか、もしくは行き詰まりが懸念されている成長モデルへさらに軸足を置いているのかが分かるだろう。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

TSMC、欧州初の工場を年内着工 独ドレスデンで

ビジネス

ステランティス、中国新興の低価格EVを欧州9カ国で

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高で 買い一巡後は小動き

ワールド

ブラジルのサービス業活動、3月は拡大に転換 予想も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中