最新記事
日本企業

日産、27日に退任したグプタ前COOの自宅に監視カメラを設置 社内セキュリティーチームが監視

2023年6月29日(木)12時30分
ロイター

もう1つの調査報告

企業の不正調査などに詳しい竹内朗弁護士は、会社が従業員や役員を監視することについて、日本では一般的に、会社が貸与したパソコンや携帯電話を調べることは問題ないと語る。一方、個人が所有する携帯などにまで及ぶと問題になる可能性があるという。

社外での行動を監視することは「会社にとって問題となる行為が社外で行われると合理的に想定される場合には問題はない」と説明。「そうでない場合には社外の行為は私的領域になるため、私的領域への過度の干渉として問題とされることがある」と話す。

同関係者らによると、初期報告の調査結果は、ナダ氏が告発文書の中で主張していたグプタ氏監視に対する内田社長の関与について結論を示していない。

日産は5月12日、次期CEO候補ともみられていたグプタ氏が任期満了で6月27日の株主総会後に取締役を退任すると発表。さらに6月17日には、同氏が同月27日付で退社すると発表した。

日産は発表文の中で「新たなキャリアを追求するため」とグプタ氏退社の理由を説明していた。ナダ氏の内部告発文書によると、グプタ氏の行動に関する社内通報が寄せられ、4月10日の週に会社が精査し、同氏に退任を求めた。事情を知る関係者3人によると、通報は女性従業員からで、グプタ氏によるハラスメントを訴える内容だった。

ナダ氏は同文書の中で、グプタ氏への監視について国際的な法律事務所に調査を依頼するよう要求。グプタ氏の行動に関する調査を巡る状況、調査結果があらかじめ決まっていたかどうか、内田氏の関与についても調べるよう求めた。

同関係者らによると、デービス・ポークの初期報告は、永井素夫・独立社外取締役に率いられていた日産の監査委員会が調査権限を恣意的に行使し、グプタ氏への通報を取り上げた可能性があると記していたという。

一方、関係者の1人によると、日本の岩田合同法律事務所もグプタ氏の行為を調査し、取締役会で結果が説明されていた。こちらは監査委による通報の取り上げ方に違法性を示す証拠はなかったとしているという。

監査委の委員長である永井・独立社外取締役も、20日の取締役会に出席することを許されなかった。

ロイターは日産を通じて永井氏にコメントを求めたが、同社は応じなかった。岩田合同法律事務所はロイターの問い合わせに対し現時点で回答がない。

ロイターはデービス・ポーク、岩田合同いずれの法律事務所も、グプタ氏のハラスメント行為に対する通報内容について何らかの結論を出したのかどうか確認できていない。

ナダ氏は内田社長の監視行為を内部告発した文書の中で、アンダーソン・毛利・友常法律事務所がハラスメント行為の通報を調査したと記している。同法律事務所はコメントを控えた。

日産とルノーは2月、1999年以来続いてきた資本関係を見直し、互いの出資比率を15%に揃えることで合意。ルノーが設立する電気自動車(EV)新会社に日産が最大15%出資することも決めた。ただ、最終契約の締結は当初の予定時期から遅れている。

ルノーの事情に詳しい関係者によると、同社の幹部もグプタ氏が両社の合意を妨害しようとしているとみていた。

日産は27日に定時株主総会を開き、会社側の議案通り内田社長ら10人が取締役に選任された。この日に退社することを決めたグプタ氏も総会に出席し、株主から就任期間を振り返っての感想を尋ねる質問も出た。しかし、内田社長が計画策定や執行、ルノー関連プロジェクトなどに「大きく貢献した」と紹介、「彼の次のステップに向かう」と説明するにとどまり、グプタ氏の発言機会はなかった。

(ダニエル・ルーシンク、白水徳彦、白木真紀 編集:久保信博、豊田祐基子)

*体裁を整えるとともに、本文中の一部表現を明確にしました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

見通し実現なら経済・物価の改善に応じ利上げと日銀総

ワールド

ハリス氏が退任後初の大規模演説、「人為的な経済危機

ビジネス

日経平均は6日続伸、日銀決定会合後の円安を好感

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    フラワームーン、みずがめ座η流星群、数々の惑星...2…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中