最新記事

経営

注目が高まる「労働時間」 出張先への移動は労働時間に入る?

2022年6月30日(木)17時40分
吉田優一 ※経営ノウハウの泉より転載

Q3:得意先から得意先への移動時間は労働時間になるか?

A3:労働時間となる

<解説>

ある会社に訪問して、その後に別の会社に訪問した場合、移動時間中は自由に行動できるケースが多いと思われますが、時間的な拘束や場所的な拘束が高いため労働時間となります。

就業規則や雇用契約書に取り決めがあれば、移動時間中とその他の業務時間の時給を変更しても法違反ではありません。例えば訪問介護サービスの場合、介護サービスを提供している時間と移動時間の時給を変更することがあります。

Q4:自主練習や自己啓発の時間は労働時間になるか?

A4:労働時間にはならない

<解説>

美容室など一定の職種では、職場に居残り自主練をすることがあります。また会社によっては労働者の自己啓発のために職場の会議室等を労働者に使わせていることがあります。このような自主練や自己啓発は、あくまで労働者の自発的な意思でおこなう行為であるため、労働時間とはなりません。

ですが、職場を使って自主練習や自己啓発を行う場合、注意が必要です。なぜなら労使間で認識のズレが起こると、本来労働時間とはならない自主練習や自己啓発の時間が労働時間だと主張される可能性があるためです。

具体的には、「名目は自主練習だが、実際は強制参加の研修だった」という形で、自主練習に対する賃金を請求されるケースがあります。このような事態を防ぐためには労働者に対して、「自主練習や自己啓発をするか否かは自由であること」を十分に説明し、労使間での認識のズレを無くすことが重要です。また説明文書や同意書などでその事実を残しておきましょう。

なお、会社が取得を指示した資格の勉強時間については、労働時間となる可能性がある点に注意しましょう。

Q5:持ち帰り残業は労働時間になるか?

A5:労働時間にはならない

<解説>

労働者が自分の判断で行った持ち帰り残業は労働時間とはならないという考え方が一般的です。理由はいつ仕事をするかという時間的な拘束がありません。自宅やカフェなど好きな場所で仕事ができるため場所的な拘束があるともいえません。テレビを見ながら行うこともでき事業主の支配下にあるともいえないためです。

ですが、持ち帰り残業が労働時間と認定される可能性があります。具体的には、ある労働者に所定労働時間内には到底処理切れない業務量が指示されていた場合、その労働者が持ち帰り残業を行ったとします。この場合、持ち帰り残業であっても労働時間と認定させる可能性があります。

また労働時間と認定されるか否かという問題とは別に持ち帰り残業には会社の管理の行き届いていない場所で業務が行われているという問題があります。このような状況だと情報漏えいの危険性があるので、持ち帰り残業はさまざま角度から実施させないようにしましょう。

労働時間になるかならない判断が難しい5つのケースをとりあげました。本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。

2020.10.23

[執筆者]
吉田 優一
社会保険労務士法人ONE HEART 代表 社会保険労務士

2012年社会保険労務士試験に合格。その後、社会保険労務士法人で中小企業の労務管理アドバイス業務に8年間従事する。その中で労務管理のノウハウを知らないために、「ヒト」の問題に悩む多くの中小企業経営者に出会う。そのような中小企業経営者にとってより役に立つ存在になるには、自分自身が中小企業経営者になる必要があると感じ、社会保険労務士法人ONE HEARTを設立し、独立開業。創業直後や上場を目指す会社の労務管理の適正化が得意。Twitterでスタートアップ、ベンチャー企業に有益な労務管理の情報を発信しています。

※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です
keieiknowhow_logo200.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国配備のパトリオット、イラン戦争転用を米国と協議

ワールド

海運マースク、中東─アジア・欧州2航路のサービス一

ビジネス

英住宅価格、2月は前年比1.3%上昇 昨年10月以

ワールド

インド、調理用燃料確保へLPG増産命令 中東危機で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 3
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影された、パイロットの「まさかの姿」にSNS爆笑
  • 4
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 5
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリン…
  • 6
    対イラン攻撃に巻き込まれ、湾岸諸国が存立危機
  • 7
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 8
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 9
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「旅客数が多い空港」ランキン…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中