最新記事

日本政治

岸田首相の的外れな政策が続くかぎり、日本人の給料は韓国や台湾よりずっと低くなる

2022年6月25日(土)16時25分
大前研一(ビジネス・ブレークスルー大学学長) *PRESIDENT Onlineからの転載

韓国、台湾に比べて労働生産性が著しく低い

日本の1人当たりGDPは、2020年時点では3万9890ドル(約452万円)と、韓国を25%、台湾を42%上回っていた。しかし、その後の数値を試算すると、2025年までに韓国は年6%増、台湾は年8.4%増であるのに対し、日本は年2%と伸びが鈍化している。

このままいけば、日本の1人当たりGDPは、2027年に韓国、2028年には台湾に抜かれるのは間違いない。

なぜ日本の1人当たりGDPは韓国や台湾ほど伸びないのか。1人当たり名目GDPは、国民全体の1年間の付加価値を総人口で割った数値のことで、労働生産性、平均労働時間、就業率で説明できる。つまり、日本は先の2国に比べ、労働生産性が著しく低いのだ。

たとえば、行政面では、韓国や台湾が行政手続きの電子化を進めているのに対し、日本はいまだに押印やサインを必要とするなどアナログ中心だ。

新型コロナウイルス対策でも、台湾ではデジタル担当大臣のオードリー・タン氏が「マスクマップ」や「ワクチン接種の予約システム」を開発するなどして迅速に対応しているのに、日本はマスクや給付金を配るのにも手間取っている。

では企業はどうかというと、韓国も台湾も新型コロナウイルスのパンデミックが起こる以前から多くの企業がテレワークを取り入れ、仕事の効率化を図っていた。一方、日本はコロナ禍でテレワークが普及したものの、緊急事態宣言が解除されると、また元に戻りつつある。

日本人の給料が上がらない理由①「労働生産性が低い」

日本の1人当たり労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)37カ国中26位(2019年)と、G7のなかで50年以上も最下位を続けている。

日本人の給料が上がらない理由は、大きく2つある。

1つは「労働生産性の低さ」だ。とくに間接業務でDXの導入が遅れているのが、致命的だと言っていい。

しかし、すでに述べたように、仮にDXを導入して必要な人員を10分の1に減らして間接業務の生産性を高めたとしても、現行の制度ではそれによって仕事を失った10分の9の社員をリストラすることができない。ここをなんとかしないとこの先も、DXは遅々として進まないことになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 6

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 9

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中