最新記事

日本政治

岸田首相の的外れな政策が続くかぎり、日本人の給料は韓国や台湾よりずっと低くなる

2022年6月25日(土)16時25分
大前研一(ビジネス・ブレークスルー大学学長) *PRESIDENT Onlineからの転載

では、日本の問題はどこにあるのか。これは、主要国の平均賃金の推移を見ると一目瞭然だ。この30年で主要国はみな賃金が右肩上がりなのに、日本だけが横ばいなのだ。3年前には韓国にも抜かれてしまっている。ちなみに、1人当たりGDPも、韓国に抜かれるのは時間の問題だ。

日本では、まじめに働いても給料が上がらないのは、要するに原資がないのだ。富の創出ができていないので、分配したくてもできないのである。

「賃上げした企業に税制優遇」の的外れ

岸田内閣の目玉が「賃上げ税制」で、2022年度税制改正大綱にもこれが盛り込まれた。これは、賃上げした企業に優遇税制を適用し、法人税の税額控除率を大企業で最大30%、中小企業で最大40%引き上げるという。

だが、私に言わせれば、まったくの意味不明な政策だ。

たとえば、生産性を向上させて賃上げをしたとしよう。これは難しいことではない。DXツールやロボットなどを活用して、それまで100人で行っていた仕事を10人で行うようにすればいいだけの話だ。

この場合、問題は余った90人をどうするかだ。ドイツなら会社は躊躇なく外に出す。そして、出された人には国が責任を持って再教育を施し、戦力化するのである。

ところが、日本では正規労働者は解雇規制で守られているため、簡単にリストラすることができないのだ。無理やりやればできないことはないが、そうすると今度は「悪徳経営者」「血も涙もないのか」と叩かれるので、手をつけにくいのである。

だからといってリストラしなければ、DXで生産性を向上させても、効果は大して出ないということになってしまうのだ。

首相は経済の勉強を一からやり直すべきだ

一方で、生産性はそのままで給料を上げると、人件費が上がって企業は収益が圧迫されて利益が減る。いくら法人税を下げてもらっても、利益が出なければ企業にとってメリットはないのだ。

だから、岸田首相は、企業に賃上げを求めるのであれば、「生産性向上で余った人員をどうするのか」という議論を一緒にしなければならないはずなのである。

岸田首相が今実施すべきことは、20年前にドイツのシュレーダー政権が行った構造改革「アジェンダ2010」型の取り組みだ。解雇規制を緩和すると同時に、職業訓練や職業紹介を充実させ、労働市場を活性化させるのである。「賃上げ税制」というわけのわからないことを行っている場合ではないのである。

それなのに、「給料を上げたら法人税を減らしてやるぞ」と上から目線で言ってはばからないのは、岸田首相が経済の原則をわかっていないからだ。

彼に必要なのはリカレント教育である。経済の勉強を一からやり直すべきだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国防長官、陸軍参謀総長を解任=関係筋

ビジネス

焦点:米ノンバンク融資、貸出先が債務不履行の恐れ 

ワールド

韓国とフランス、「戦略的パートナーシップ」に関係格

ビジネス

イーライリリー経口肥満薬、売上が今年数十億ドルの予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受給年齢」
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 5
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 6
    日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    先進国が出生数の減少を嘆く必要はない? 「経済的…
  • 9
    「一般市民に敵意なし」...イラン大統領が米国民宛て…
  • 10
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中