最新記事

学び直し

自分で成長を止めないで...「このまま終われるか!」から始まる生き直し戦略

2022年6月7日(火)16時42分
flier編集部

「へなちょこでも生きられる」

── 河合さんは健康社会学の研究をもとに、働き方、ウェルビーイングなど、人が幸せに生きるための道筋を提言されています。こうしたテーマの研究や執筆活動を続けている原動力は何ですか。

その原点は健康社会学の研究に進む前にあります。最初のキャリアはキャビンアテンダントでしたが、「専門的なテーマについて自分の言葉で表現したい」とCAをやめ、次の道を模索していました。では何について語れるのか? そう考えていたときに気象予報士という資格ができると知りました。それを取得すれば、子どもの頃アメリカのアラバマ州に住んでいたときに憧れていたウェザーキャスターの仕事ができる。自分の言葉で天気の予報を伝えられたらと、気象予報士の試験を受け、天気キャスターの道を歩んできました。

天気が予報できると、新しい靴を濡らさなくなった。些細なことですが、それがすごく楽しくて。「みんな、こんないいことあるんだよ!」と天気にのめり込みました。しかも、天気次第で気分もかわる。雨が降るとブルーになるし、晴れるとそれだけで気分がいい。こうしたことへの興味が高じて、天気と環境、人の心との関係を研究する生気象学を独学することに。やがて、天気以外にも人の心に影響を与える要因が知りたい、自分の言葉を持ちたいと思うようになり、大学院へ進学。健康社会学の世界へ進みました。健康社会学は、人と環境との関わり方にスポットをあて、人の幸福感や生きる力を研究する学問です。「人は環境で作られ、人は環境を変えることもできる」ことを、健康社会学は前提にしています。

たとえば、本書でも紹介したSOC(Sense of Coherence=首尾一貫感覚)もその1つ。SOCとは一言でいえば、「世界は最終的に微笑んでくれるという確信」です。

「自立」とか「自己責任」ばかりが叫ばれる世の中ですが、どんなへなちょこでも、半径3メートル世界の人たちといい関係を築ければ強くなれる。私もへなちょこの1人なので、SOCのような難しい理論を、科学的なエビデンスを示しながら、一般の方にわかりやすい言葉で発信していきたい。お天気お姉さん時代から、「みんな、こんないいことあるんだよ!」という思いが一貫してあるんです。

職場の人間関係や介護問題、定年の問題など、世の中で置き去りにされている立場にある人にこそ伝えたいし、声にならない悲鳴を取り上げることで、温かい半径3メートル世界があちこちにできれば、もうちょっとだけ生きやすい社会になるのではないでしょうか。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米インテル、通期経費見通しを下方修正 アルテラ株売

ビジネス

ブレント原油価格、来年の予想に下振れリスク=HSB

ワールド

中国の8月粗鋼生産、3カ月連続減 大気汚染対策と季

ビジネス

米グーグル、68億ドルの対英投資発表 トランプ大統
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中