最新記事

日本

原研哉らが考える、コロナ後の「インバウンド復活」日本観光業に必要なもの

2022年5月26日(木)11時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

瀬戸内の夕日 makafushigi-iStock.

<製造業が衰退する日本が今後生き延びるためには、「観光」という産業について真剣に話し合う必要がある――。デザイナーの原研哉をはじめ、多彩な頭脳が集まる「瀬戸内デザイン会議」が考えた日本の未来とは>

20~30年後の日本経済は何で食べているのだろう。製造業中心で走ってきた日本の経済や産業は、「モノをつくる」から「価値をつくる」への移行が進んでいないのではないか。また、ポスト工業化社会の中で新たな産業の資源を見立てていく視点は、まだ想起されていないのではないか。

そんな問題意識から、日本の未来資源となりうる「観光」産業の未来について話し合う場として、2021年に第1回「瀬戸内デザイン会議」は開催された。

この会議の発起人は、日本デザインセンター代表でグラフィックデザイナーの原研哉、せとうちホールディングス株式会社の設立者であり、瀬戸内を中心に町おこし事業を展開する神原勝成、イシカワホールディングス株式会社代表ほか数々の事業を手掛ける石川康晴の3人。

そこに、3人が募った多様な領域のプロフェッショナルが加わることで発足したのが、「瀬戸内デザイン会議」である。

参加メンバーは、経営者、デザイナー、建築家、編集者、ライター、アーティスト、投資家、料亭女将、住職など多岐にわたり、いずれも各業界のトップランナーたちばかり。

グローバル化とコロナ禍によって、可能性と問題が錯綜しているこの時期だからこそ、会議から生まれた構想をただの空想に終わらせることなく、即座に実行していくことが肝要ということで、具体的な実行力を伴いつつ、多元的な観点から新しい観光の在り方を模索し得るメンバーが集まった。

日本列島という資源をどう活かしていくか。メタバースやAIが世界を席巻する今、オーセンティックな価値をどう扱っていくべきか。それぞれのヴィジョンを交差させながら、新次元の観光を実現していく会議体として、今後も継続的に会議が開催される予定だという。

厳島の旅館「蔵宿 いろは」に3つの構想

近畿圏から九州圏までの広域をつなぐ海としての瀬戸内は、現在、世界中から注目され始めているエリアだ。だが、会議名に付いている「瀬戸内」とは、瀬戸内という限られた地域を指すものではなく、インターローカルなメディアとしての瀬戸内を指しているという。

つまり、この会議は決して一地域の話に終始するものではなく、日本全体、あるいはアジアに広がっていく観光の在り方にまでヴィジョンを展開しようというのである。

この会議の第1回の議論をまとめた『この旅館をどう立て直すか 瀬戸内デザイン会議―1 2021宮島篇』(CCCメディアハウス)が発売された。

本書では、会議の開催場所となった厳島の旅館「蔵宿 いろは」を、瀬戸内海を回遊する人気客船旅館「ガンツウ」に匹敵する観光拠点とするためにどんな構想が考えられるか、を3つのチームが提案している。実例を通じて、議論を交えながら具体的な提案に落とし込むという一連の流れを読むことのできる1冊である。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

国連総会、ウクライナ支持決議を採択 米は「交渉の妨

ビジネス

NY外為市場=円下落、日銀政策巡る摩擦を懸念

ビジネス

再送-〔アングル〕日鉄の巨額CBが示す潮流、金利上

ビジネス

米国株式市場=反発、AI巡る懸念後退 ハイテク株が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中