最新記事

自動車

トヨタ、サブスクでEV巻き返しへ リースが主流の法人需要で普及狙うか

2022年5月12日(木)16時58分

小寺社長は、想定される顧客について「『今度はトヨタのEVにしてみようか』というように、新しいものに飛びついてくるような人がまず最初にくるだろう」とみている。

一方、サブスクの料金設定に関しては、割安感は感じられないとの声もある。SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは「高い」という印象だ、と話す。

「試行錯誤」

日本自動車販売協会連合会によると、2021年に日本で販売された乗用車のうち、EVはまだ1%に過ぎない。SBI証券の遠藤氏は「売る方も買う方も試行錯誤。トヨタのサブスクも、これを顕著に反映している」と語る。

ただ、欧州や中国でEV販売をすでに本格化させている海外勢は日本でも積極的だ。日本自動車輸入組合によれば、21年のEV輸入台数は過去最高の8610台と前年比3倍近くに急増。このうち約6割、5000台以上がテスラ車だったとされる。スウェーデンのボルボ・カー日本法人では昨年、限定100台のEVをサブスクで提供したが、6倍近い575件の応募があったという。

日本勢も動き出す。同じ12日、SUBARUはbZ4Xの兄弟車「ソルテラ」の受注を開始、日産も量産EV第2弾「アリア」の標準車の国内販売を始める。ただ、いずれも販売は従来通りの売り切りだ。車両価格はソルテラが594万円から、アリアが539万円からで、国の補助金利用で400万--500万円台からとなる。   

「自信があるからサブスク」

日産は世界初の量産型EV「リーフ」を10年に発売し、市場を開拓してきた自負がある。これまで販売台数は想定通りに伸ばせていないが、EV販売の長年の経験を武器に今年はアリアのほか、三菱自動車と共同開発した軽自動車、リーフの新型車の3車種を投入する予定だ。

各車種の販売台数目標は未公表だが、同社の日本マーケティング本部チーフ・マーケティング・マネージャーの柳信秀氏は「3車種全てアクセル全開で売る計画だ」と話し、「今年度売らずにいつ売るのか。今年失敗したら(チャンスは)もう2度とない」といった気概で臨んでいるという。

トヨタも「真面目にEVを普及させたい」(小寺社長)との思いだ。東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは、規制でEVの普及が進む欧州では企業の環境対策としてEVが導入されやすく「リースが主流の法人需要が強い」といい、トヨタも欧州同様の普及を日本で狙うのでは、との見方だ。「売り切りにすると車両を分解される恐れもあり、トヨタはEVに自信があるからこそサブスクを選んだ」ともみている。

ある日産幹部は、売り切りにしなかったトヨタと「真っ向勝負できない」と悔しがる。ハイブリッド車で躍進したトヨタがEVでも巻き返せるのか戦略が試されている。

(白木真紀、杉山聡 編集 橋本浩)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・外国人同士が「目配せ」する、日本人には言いづらい「本音」
・中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、2会合連続据え置き パウエル議長「中東情勢

ワールド

原油先物5%上昇、IRGCが複数のエネルギー施設攻

ワールド

中国、27年までの台湾侵攻計画せず 米情報機関が分

ワールド

イラン新指導者「犯罪者は代償支払う」、政権幹部ラリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポリ」が中東へ
  • 4
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 9
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中