最新記事

経済制裁

ロシア、いよいよデフォルトへカウントダウン 想定されるシナリオまとめ

2022年4月11日(月)16時34分
ルーブル硬貨

ロシアはこのほど、国際市場で発行したドル建て国債を初めてルーブル建てで返済する手続きを講じたため、対外ソブリン債で初のデフォルト(債務不履行)を起こす可能性が出ている。写真は2018年10月撮影(2022年 ロイター/Maxim Shemetov)

ロシアはこのほど、国際市場で発行したドル建て国債を初めてルーブル建てで返済する手続きを講じたため、対外ソブリン債で初のデフォルト(債務不履行)を起こす可能性が出ている。

格付け会社S&Pは9日、ロシアが海外債権者への返済義務を果たせない、あるいは果たそうとしないリスクが高まったとして、同国の外貨建て国債格付けを「SD(選択的デフォルト)」に引き下げた。

ロシアは1917年のロシア革命直後以来、対外債務でデフォルトを起こしていない。ロシア国債の格付けは、同国がウクライナに侵攻する2月24日までは投資適格級となっており、デフォルトは最近まで想像不可能な事態だった。

ロシアのデフォルトの可能性について要点をまとめた。

◎ロシアは返済できるか

ロシアは4日、2種類のソブリン債について6億4900万ドルの返済期限を迎えた。しかし米財務省は、ロシアが凍結された外貨準備を使って返済することを阻止した。

ロシアは代替策として、いわゆる非友好国の債権者への返済資金を、ルーブル建てで国家保管振替機関(NSD)の特別口座に振り込む措置に出た。

4日に期限が到来したソブリン債の元利支払いには、30日の猶予期間が存在する。

アナリストによると、ロシアには返済の手段も能力もある。エネルギー輸出で数十億ドルの収入を得ているほか、外貨準備の約半分が凍結されているとはいえ、凍結されていない外貨準備も数億ドル分残っている。

国際金融協会(IIF)のデピュティ首席エコノミスト、エリーナ・リバコワ氏によると、これは「支払い意志(WTP)のある状態」と見なせそうだ。

米財務省は、米銀がロシアの支払いを代行する「コルレス銀行」になることは禁じていない。5月25日まではロシアのソブリン債の返済に関する支払いができるよう、認可を与えた。

こうしたことを総合すると、ロシアは意志さえあればまだ返済が可能なようだ。

◎デフォルトの種類

デフォルトとは、最も基本的なレベルで言えば契約違反だが、この言葉には幅広いシナリオが含まれ得る。

国際通貨基金(IMF)の債務再編専門家の論文によると、返済デフォルトとは、猶予期間が過ぎても元本、利払い、その他の債務を支払わないことを指す。

しかし行政上のミスなどで起こる技術的なデフォルトもあり、これらは一般に市場参加者から重視されず、速やかに修復することが可能だ。

不適切な通貨、この場合はルーブルで返済することは、返済不履行に当たると法律専門家は指摘する。

ロシアは、このデフォルトの概念を否定している。ペスコフ大統領報道官は6日、「理論上のデフォルト状態を作り上げることは可能だが、それは純粋に人為的な状態だ」とし、「実際にデフォルトになったという根拠はない」と切り捨てた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中