最新記事

金融政策

円債金利、マイナス政策導入以来の高水準 日銀金融正常化の思惑消えず

2022年1月31日(月)18時30分

日銀が金融正常化に向かう道筋はいくつかあるが、その1つはターゲット金利の短期化だ。現在のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策は短期金利をマイナス0.1%、10年物国債金利をゼロ%を中心に維持しているが、目標金利を10年から5年に短期化すれば、5年以降の金利は上昇しやすくなる。

国際通貨基金(IMF)は今月28日、利回り目標をより短期的な金利を対象にするのが望ましいと指摘。経済活動に重要な短中期債の利回りを低く抑えつつ、長期化する金融緩和が金融機関の収益性に与える影響を軽減しうるとした。

5年債は27日にマイナス0.010%とゼロ%が視界に入る水準まで上昇。「事実上の短期化を織り込んだといってもいい水準」(国内証券)を付けている。10年債の1年先のフォワードレートは31日、0.270%とYCC目標レンジの0.25%を上回る水準まで上昇した。

「ワンクッション」が必要か

しかし、マーケットも日銀が次回会合(3月17─18日)で政策変更に動くとまではみていない。「黒田総裁があれだけ強く否定したからにはすぐには動けないだろう」と、アライアンス・バーンスタインの日本債券ポートフォリオ・マネージャー、橋本雄介氏は話す。

このため10年債金利がこのままYCC目標上限の0.25%をすぐに目指すとの見方は少ない。連続指し値オペなど、日銀が金利上昇を抑える「ツール」は豊富だ。米10年債金利が2%を目指すような展開にならなければ外部環境の後押しも弱い。

日銀が正常化に向かうには「ワンクッション」が必要だとみる声が多い。物価動向を点検して日本の物価も2%に届かないにせよプラスが安定的に維持できるとの分析が出るとか、政治側からインフレ抑制を求める声が強まるといった後押しだ。

世界的にインフレが進行。日本でも消費者物価指数は2%にまだ届かないが、多くの商品が値上げされている。その中、各国中銀は利上げなど金融正常化に動き始めた。「政策の柔軟化を検討するのであれば、今ほどのチャンスはない」(三菱UFJMS証券の六車氏)とも言える。現時点では市場の思惑先行ではあるが、思惑はなかなか消えそうにない。

(伊賀大記、取材協力:植竹知子 編集:石田仁志)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・外国人同士が「目配せ」する、日本人には言いづらい「本音」
・中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権、10%の代替関税発動 15%への引き上げ方

ワールド

アンソロピック、AI軍事利用の制限緩和しない意向=

ワールド

米国務省、ロシア攻撃で米の利益損なわないよう警告 

ビジネス

ワーナー、パラマウントと交渉へ 1株31ドルの新提
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 8
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中