最新記事

温暖化対策

バイデン、2050年に航空機燃料の脱炭素化を検討

2021年8月11日(水)10時04分
ジェット機への燃料補給

 バイデン米政権は、航空機燃料の脱炭素化について2050年を達成時期とすることを検討している。8月10日、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。2019年10月、ラスベガスで撮影(2021年 ロイター/David Becker)

バイデン米政権は、航空機燃料の脱炭素化について2050年を達成時期とすることを検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

こうした取り組みは、充電施設拡充のための公共投資や自動車の電動化推進などと並ぶ気候変動対策の一環。航空機産業は電動化が難しいため、温室効果ガス排出量削減の方法として「持続可能な航空燃料」(SAF)の民間生産を支援するさまざまなインセンティブ導入が考えられている。

2人の関係者は、政権は50年を目途に再生可能資源に由来する燃料で全ての航空機を飛行させることを目指していると説明した。

米国だけでなく欧州も、食用油や油脂などを原料とするSAFの生産促進と実用化の道を模索しているところだ。ただ現時点では石油から精製した従来の航空燃料に比べて価格が2-5倍と割高で、普及率も極めて低い。関係者らは、バイデン政権内の議論もまだ始まったばかりだと述べた。

ザイディ大統領副補佐官(気候変動問題担当)は「ビルド・バック・ベター(より良き再建)計画として、大統領はSAFの技術革新と普及を後押しする投資を提案した。政権は、気候危機が求める緊急性を踏まえ、経済のありとあらゆる分野で解決策を実行していく決意だ」と強調し、政権がSAFを政策課題としていることは認めたものの、50年を1つの目標としているかどうかに関しては言及しなかった。

航空機産業は、バッテリーの重さが制約になることから、当面電動化は不可能とみられている。そこでバイデン政権が温室効果ガス排出量削減の切り札として目を付けたのがSAFだ。もっとも政権は、欧州のように規制当局が従来の航空燃料のサプライヤーにSAFの混合を義務付けるといった強制措置は念頭にない。実際、米航空業界もそうした規制には反対している。

3人の関係者の話では、ホワイトハウスと業界側は今月、SAFの利用推進に向けた会合を開催する見通しだが、まだ具体的な行動内容は定まっていないという。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮が「さらなる攻撃的行動」警告、米韓安保協議受

ビジネス

NY外為市場=ドルおおむね下落、米景気懸念とFRB

ビジネス

ステーブルコイン普及で自然利子率低下、政策金利に下

ビジネス

米国株式市場=ナスダック下落、与野党協議進展の報で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 8
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 9
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 10
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中