最新記事

環境

クリーンエネルギー投資拡大 最大1000万人の雇用の可能性、コロナ禍の経済回復を後押しか

2021年7月12日(月)11時15分

たとえば英国では、グリーンエネルギーへの投資拡大が持続可能な雇用創出と経済成長を支える可能性がある。特に、かつて石炭の産地だったイングランド北部や、石油・ガス生産地のスコットランドでは大規模な風力発電事業の整備が進んでおり、グリーン投資の拡大がその大きな支えになるとみられている。

現在英国で資金調達を準備している事業は、主に太陽光・風力発電のプロジェクト540件で、約43万9000人の雇用を生み出す可能性があるという。さらに、電力貯蔵、変電、送電部門を加えると、見込まれる総雇用数は62万5000人に達する可能性がある、とリポートは試算している。ECFは、これが実現すれば、コロナ禍で失われた雇用の90%を取り戻せるとしている。

途上国での普及、先進国の姿勢がカギ

ただ、トニー・ブレア元首相が運営するトニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所の(温暖化ガス排出量を実質ゼロにする)ネットゼロの専門家、ティム・ロード氏は、世界の多くの場所で、労働者が様々なクリーン技術とそれらの基づくサプライチェーンを展開できるだけのスキルをまだ持っていないと慎重な見方を示した。

同氏はこのリポート作成には関与していないが、「この移行は、洋上の石油・ガス関連労働者をつれてきて風力タービン操作の訓練を行ない皆が満足する、といった単純なものではない」と指摘。「明らかに一定の行き違いが生じるだろう」と述べた。

そのうえで、発電能力と再生可能エネルギー使用の拡大に必要な地元インフラと技術を開発するには、政府と企業の協力が不可欠と指摘。これができれば必要な投資の誘因につながるとした。

さらに同氏は、トムソン・ロイター財団に対し、人口の多くが電気を使うことができず、強い市場が形成されていない途上国では、難易度が一段と高いと指摘。11月にスコットランドで開催する第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は途上国を化石燃料からよりクリーンな発電に転換させるカギとなるが、それにはより富裕な諸国が脱炭素に対して明確なコミットメントを示さなければならないと述べた。

同氏は、「より規模の大きな国々が役割を果たしていると低所得諸国が感じる環境になれば、投資を巡る環境が前向きとなり始め、人々がそれを真剣に受け止めるようになる」と付け加えた。

(Megan Rowling記者)


[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・テスラ、総工費7700億円超を投じたドイツ「ギガファクトリー」の迷走
・SDGsの先に待つ未来はこんな感じ? 世界の持続可能なスポット9選
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:カジノ産業に賭けるスリランカ、統合型リゾ

ワールド

米、パレスチナ指導者アッバス議長にビザ発給せず 国

ワールド

トランプ関税の大半違法、米控訴裁が判断 「完全な災

ビジネス

アングル:中国、高齢者市場に活路 「シルバー経済」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 6
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 7
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 8
    「体を動かすと頭が冴える」は気のせいじゃなかった⋯…
  • 9
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中