最新記事

中国経済

展望2021:中国共産党100周年 経済の実体は大変化、効率と公平のリバランスへ

2021年1月1日(金)10時55分

2021年は中国にとって極めて重要な年だ。共産党結成100周年、かつ第14次5カ年計画の開始年でもある。写真は北京のショッピングセンターの飾りの前に立つ親子。12月23日撮影(2021年 ロイター/Tingshu Wang)

2021年は中国にとって極めて重要な年だ。共産党結成100周年、かつ第14次5カ年計画の開始年でもある。失敗は許されないが、新型コロナウイルスによる景気悪化からの反動で成長率は大きく回復する見通しだ。しかし、経済の中身は大きく変化するとAIS CAPITALの代表パートナー、肖敏捷氏は指摘する。

──中国経済の回復傾向は来年も続くか。

「今年の反動で、ほぼ自然体でも8─9%の高成長が期待できるとみられている。しかし経済の中身は、コロナ前とは大きく変化するだろう。これまでは経済の効率に重点を置いた成長スピード重視政策だったが、所得格差を生み出してしまった。今後は公平を重視した政策にシフトする方向だ。効率と公平のリバランスが来年のテーマになる」

──経済の公平はどのように実現するのか。

「アリババなどIT大手に対して政府の態度が冷たくなってきた。これまでは成長のけん引役として期待されてきたが、こうした効率重視のビジネスは必ずしも多くの雇用を生まず、逆に雇用を奪うことが分かってきたためだ。実際、アリババはネットで野菜も売っているが、このために野菜を販売していた露店の多くが倒産の危機に瀕している」

「衣食住といったサービス業は、高成長のけん引役とはなりにくいが、労働集約的で雇用を多く生みやすい。約15億人の人口を抱える中国にとって雇用の確保は、依然として最重要の政策目標だ。医療や教育なども短期的な成長には表れにくいが、手厚くして所得の再配分を図るとみられる」

──新型コロナを抑え込めているのはなぜか。

「躊躇(ちゅうちょ)ないロックダウン(都市封鎖)だ。外出がほとんど禁止される厳格なロックダウンによって感染拡大を食い止め、経済の急速な回復に成功した武漢市のモデルを他にも適用している。最近はわずかでも新規感染者が見つかれば、周辺の地域を含めてロックダウンするほどだ。厄介なコロナは、こうした剛腕的な施策によって、人と人の接触を断ち切るしかないと考えているようだ」

──中国の金融市場の見通しは。

「景気回復を背景にした株高が継続すると予想している。ただ、中国株を含め世界の株式市場はギャンブル色が強くなってきた。来年後半ぐらいからは、織り込み過ぎたものが剥落する可能性も大きいとみている」

「その際、日本と米国のマーケットはほとんど一緒に動くため、ヘッジにならない。第3の選択肢として中国株を考える投資家が増えてきている。最近、欧米の金融機関が中国で次々にビジネスを拡大させているのは、そのためだろう」

──米国との関係はどうなるか。

「米中の大きな対立軸は変わらないが、けんかの仕方は変わりそうだ。トランプ大統領はトップダウンでいきなり行動を起こすため対応が難しかった。民主党政権になれば、人権や環境など、中国にとってやりにくいテーマでぶつかり合うとみられるが、外交のプロセスが可視化されれば、対応もしやすくなる」

「重要な役割を担うとみられているのが、米通商代表部(USTR)代表に就任すると目されているキャサリン・タイ氏だ。中国系米国人で、中国の事情にも詳しい。トランプ政権で大きく悪化した米中関係をどう立て直すか注目される」

──日本との関係は。

「中国サイドとしては政府も民間も、もっと日本と仲良くしたいと思っているはずだ。いまはコロナ対応で両国とも内政で手いっぱいだが、コロナで変わる世界のパズルの中で、日本には米中のクッション役が期待されている」

(伊賀大記 編集:内田慎一)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声・反日デモへつながった尖閣沖事件から10年 「特攻漁船」船長の意外すぎる末路


ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中