最新記事

ゲーム

展望2021:活況のゲーム業界、「巣ごもり」後に試されるソニー・任天堂

2021年1月4日(月)09時00分

国内では、新型機の出足が先代に比べて鈍いとして先行きを懸念する声もある。ファミ通の調べによると、PS5の発売日11月12日から4日間の国内販売は約12万台で、PS4の発売から2日間の約32万台に及ばなかった。需要がないわけではない。ソーシャル・ネットワーク(SNS)などでは入手困難を嘆くユーザーの投稿が見られ、オークションサイトでは定価を上回る価格で取引されている。

流通が少ない背景についてファミ通の林氏は、市場の大きさに基づいて初期在庫の多くが米国に割り振られたと推測している。「先代のPS4は、北米で発売が先行し、数カ月遅かった日本での発売時には在庫が確保されていた」(林氏)。

出足の鈍さは、中長期的な国内の販売にも影響しかねないとエース経済研の安田氏は指摘する。新型ゲーム機は、発売直後にコアユーザーを多く獲得し、SNSなどでの口コミを通じて裾野が拡大するのが一般的な展開だという。ソニーはPS5の累計販売台数や国・地域別の販売台数は公表していない。

一方、任天堂のスイッチは、ゲームファンからファミリーまでユーザー層が幅広い。スイッチは発売から4年目ながら、ゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』の大ヒットでユーザーの裾野がさらに広がり、あつ森以降も『桃太郎電鉄』や『天穂のサクナヒメ』といったヒットが続いた。

ゲームの面白さに気づいたばかりの新規ユーザーは、新しく手に入れた娯楽となるゲームを、生活スタイルが元に戻ってもしばらく継続するだろうと、エース経済研の安田氏は話す。コロナによる開発の遅れで、発売時期が今年にずれ込んだ大型タイトルも控えているとみられ、「スイッチ本体が頭打ちになったとしても、新作ソフトの拡販効果で増益も可能」(安田氏)との見方もある。

部品不足の懸念くすぶる

一方、足元では、世界的な半導体不足の懸念がくすぶる。「個人消費や企業による設備投資のコロナ禍からの戻りが速い」(電子部品メーカー関係者)ことが主因とみられ、ゲーム機は第5世代(5G)通信網に対応したスマホなどと通信チップの奪い合いになる恐れがある。

現行のゲーム機はコントローラーなどの周辺機器がワイヤレス化され、通信チップは欠かせない部品となっている。エース経済研の安田氏は「最悪の場合、ゲーム機の生産が滞るリスクがある。部品の確保も課題になりそうだ」と指摘している。

(平田紀之 編集:久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



ニューズウィーク日本版 日本人と参政党
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月21日号(10月15日発売)は「日本人と参政党」特集。怒れる日本が生んだ参政党現象の源泉にルポで迫る。[PLUS]神谷宗弊インタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドとカナダ、関係改善へ新ロードマップで合意

ワールド

仏、来年予算300億ユーロ超削減へ 財政赤字対GD

ビジネス

PayPayが12月にも米でIPO、時価総額3兆円

ビジネス

英議員、中ロなどのスパイの標的 英情報機関が警告
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中