最新記事

外国人労働者

「小さな幽霊」不法出稼ぎタイ人、韓国で数百人が死亡 

2020年12月24日(木)17時45分

韓国でタイからの出稼ぎ労働者が何百人も死亡していたことが、トムソンロイター財団の取材で判明した。ソウルで2016年8月撮影(2020年 ロイター/Kim Hong-Ji )

韓国でタイからの出稼ぎ労働者が何百人も死亡していたことが、トムソンロイター財団の取材で判明した。その多くは不法滞在だった。これを受けて、国連は事態の解明のための調査を呼び掛けている。

ソウルのタイ大使館に情報公開請求して入手したデータによると、2015年以降、少なくとも522人のタイ人が韓国で死亡していたが、このうち84%が、タイ語で「小さな幽霊」と呼ばれる不法な出稼ぎ労働者だった。死因は10人に4人が不明とされるが、残りが健康関連、事故、自殺だった。

新型コロナウイルス禍の労働環境への影響を巡り懸念が強まる中で、今年の出稼ぎ労働者の死亡数が12月半ばで既に122人と、過去のどの年よりも多くなっていることもデータで分かった。

また、タイ外務省への情報公開請求では、15年から18年にかけて韓国で死亡したタイ人は283人で、どこの外国における死亡者数よりも多かった。19年から20年までのデータは得られなかった。

国連の国際労働機関(ILO)の出稼ぎ労働の専門家、ニリム・バルアー氏は「気掛かり(なデータ)だ。注意と調査が必要だ」と指摘。「不法な出稼ぎ労働者は保護が最も手薄で、健康と安全の点で懸念がある」と述べた。

韓国にいるタイ人出稼ぎ労働者や、その後に帰国した人々、人権団体、タイ当局者らへの取材によると、韓国にいる何万人もの不法出稼ぎ労働者は過労状態にあり、医療にアクセスできない上、本国送還を恐れて搾取を通報しない傾向がある。

活動家らによると、両国政府とも出稼ぎ労働者の死亡についての統計を公表していない。このためコロナ禍で多くの外国人労働者がリスクにさらされたままになっているにもかかわらず、彼らの労働状況にほとんど注意が払われていない。待遇改善のための調査も実施されていない。

国連移住機関(IOM)は、トムソンロイター財団が明らかにしたデータについて「懸念すべきもの」であり、状況を注視しているとした。

韓国の雇用労働省や法務省、外務省などの関係省庁は、データについてコメントを拒んだ。バンコクの韓国大使館はコメント要請に反応していない。

タイ外務省のデータによると、国外で働いているタイ人は合法、不法含めて少なくとも46万人。行き先のトップは韓国で約18万5000人にのぼる。韓国では母国で働くよりもはるかに高い所得が得られる。

タイと韓国は、1981年から一定期間のビザ免除協定を結んでいる。労働専門家によると、多くのタイ人が職を求めて韓国に入ったのは2018年の平昌冬季五輪を控えた時期で、そのまま工場や農場の不法就労者として残った。

きつい汚れ仕事

ソウルのタイ大使館によると、韓国で働くタイ人18万5000人の約1割は、「雇用許可制度(EPS)」と呼ばれる専門の制度を通じて合法的に働いている。

残りが小さい幽霊、すなわち不法出稼ぎ労働者で、タイでブローカーに高額の手数料を払って外国での職を斡旋(あっせん)してもらった人々だ。手数料には渡航費用や滞在費用が含まれることもある。

こうした出稼ぎ労働者は、90日間と定められたビザ免除の滞在期間を過ぎると、不法滞在となる。しかし、出稼ぎ労働者によると、韓国での稼ぎは普通、最低でも月120万ウォン(1100ドル)で、タイの最低賃金の3倍以上とされる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

伊藤園、通期純利益を10億円に下方修正 自販機事業

ビジネス

インタビュー:海外マネーの日本投資を促進、中東に焦

ビジネス

日経平均は反発、自律反発狙いの買いで 半導体高い

ワールド

インド・EU、FTA最終合意 世界GDPの25%カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 8
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中