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ユニクロ? ダイソー? 「パクリ」企業と皮肉られていた中国メイソウが米国上場の驚異

日本語の商品を販売しているにもかかわらず、正体は中国企業。そんな謎の企業「メイソウ」がアメリカで上場しました。いったいどんな会社なのでしょうか EDGAR SU - REUTERS

「無印良品とユニクロとダイソーを足して3で割った中国ブランド」と揶揄されることもある名創優品(メイソウ、MINISO)が10月15日、ニューヨーク証券取引所に上場、初値は公募価格の20ドルを上回り、24.4ドルをつけた。

かつて、公式サイトで「無印良品、ユニクロ、ワトソンズから『世界で一番怖い競争相手』と称される」と自称していたメイソウは、2013年の創業から7年で、店舗網を80以上の国と地域、約4200店舗に拡大している。

店舗数ではユニクロ(2196店舗、2019年8月期)と無印(1033店舗、2020年2月期時点)を足した数を上回っている。堂々と既存ブランドを模倣し、中国の消費者からも「パクリ」企業と皮肉られてきたメイソウは、なぜ短期間でここまで急成長できたのか。

意味不明な日本語にもやもやする在中日本人

メイソウ1号店が中国・広州市に出現したのは2013年秋。以降、全国に猛烈な勢いで増殖し、ユニクロを彷彿させる赤いロゴと、ブランド名は無印良品を思わせる「名創優品」に、2014年には在中日本人がざわつき始めた。

ちなみにロゴや商品は「MINISO」「メイソウ」という英語・日本語が使われている。販売する商品は10元の雑貨が多く(約160円、当時)、ビジネスモデルはダイソーだ。

一見日本ブランドのように見えるメイソウだったが、商品名や商品説明の日本語はほとんど意味不明だった。

無印風のボトルに入った化粧液の商品名は「保湿補水乳だった」と意味不明なうえになぜか過去形だ。

洗剤の容器には「強ぃの洗潔剤」、ボディソープには「と皮膚の皮橡擦」「消しゴムのような肌」と記載されている。

本社は東京・銀座、2017年時点で公式サイトには「2013年に中国に進出」と紹介されていたが、日本の出店は2014年秋と中国より後だ。

だが、「変な日本語」が気になって仕方がないのは日本人だけで、無印良品やイケアが「コンセプトの明確なライフスタイル雑貨」という市場を開拓しつつあった中国では、「おしゃれな雑貨をリーズナブルな価格で扱う日本ブランド」はすぐに受け入れられた。2015年には都市部の商業施設や繁華街で普通に見かけるようになり、中国人消費者に日本ブランドの模倣と気付かれた後も、成長は止まっていない。

今では周知の事実だが、メイソウは「日本ブランド」を巧みに模倣した中国ブランドだ。創業後しばらくは日本人デザイナー三宅順也氏を共同創業者に据えて企業の顔としていたが、今は公式サイトでも本当の創業者、葉国富氏が前面に出ている。

また、グローバル展開とともに、ほとんどの商品から日本語が消え、代わりに多言語の商品説明が添えられるようになった(とは言え今も丁寧に探せば、変な日本語を見つけることはできる)。

上場にあたってメイソウがアメリカ証券取引委員会(SEC)に提出した目論見書からは、ベールに包まれていた同社の経営状況も明らかになった。2020年6月期、同社の流通総額は190億元(約3000億円)。売上高はコロナ禍の逆風で前年同期比4.4%減の89億7900万元(約1400億円)、純損益は2億6000万元(約40億円)の赤字だった。

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メイソウで売られていた、謎の日本語の製品(写真:筆者撮影)

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