最新記事

金融

ビットコイン、2017年の最高値に近づく 市場成熟でも「通貨」としての決済利用遠く

2020年11月21日(土)13時24分

代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインの価格が2017年に記録した過去最高値に迫りつつある。写真はビットコインのイメージ。5月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインの価格が2017年に記録した過去最高値に迫りつつある。ビットコイン推進派の人々は、今回の上昇局面は、熱狂した個人投資家の関与が減っているので、かつてのような暴落が起きる公算は乏しいと期待している。しかし決済手段としてはまだほとんど使われず、金融市場全般に対する世界的な不透明感も広がっているため、ビットコインは安全な投資先とは到底言えない、とアナリストは警告する。

「以前の事態とは異なる要素がたくさんある」と語るのは仮想通貨メディア、ザ・ブロックの調査ディレクターのラリー・サーマク氏だ。「価格は着実に上がり、個人の参加はほとんど見られず、市場は流動性がずっと高まり、機関投資家にとってはるかに利用しやすくなっている。とはいえ、今のところ非常にリスクが大きい」という。

ビットコインの価格は18日に1万8000ドル台を突破し、17年12月以来の高水準を付け、年初来の上昇率はおよそ160%に達した。

熱狂的ブームになった2017年に匹敵

この勢いは17年に匹敵する。当時は、個人投資家の買いが広がって一時2万ドル近くに跳ね上がった後、1カ月後には半値未満に落ち込んだが、現在は有効に機能するデリバティブ市場や、既存の大所の金融機関による保管サービスなど、インフラ環境は比べものにならないほど整っている。

例えば17年12月に始まったCMEグループのビットコイン先物の取組残高は今週、初めて10億ドルを超えた。仮想通貨データ提供会社スキューによると、19年初め段階でほぼゼロだった主なビットコイン関連オプション市場の規模は、40億ドル強にまで拡大した。

一方、フィデリティ・インベストメンツや野村ホールディングス<8604.T>といった大手金融機関は、ビットコインその他仮想通貨について、機関投資家向けの保護預かりサービスを開始している。

仮想通貨データを扱うメサリのライアン・セルキス最高経営責任者(CEO)は「市場の成熟度という面では17年と今とでは全く比較にならない。当時はデリバティブとクレジット市場はほとんどなく、機関投資家向け保護預かりは存在しなかった」と話す。

この種のインフラ登場により、ヘッジファンドからファミリーオフィスに至るまでの機関投資家が、仮想通貨投資に向かいやすくなった。

ブロックチェーンのソフトウエアを手掛けるクリアマトリクスの市場情報責任者ティム・スワンソン氏は「3年前とは使い勝手が一変したため、仮想通貨市場に積極的に参入しようとする投資家の層が広がっている」と語る。機関投資家が市場に加われば、流動性はより分厚くなり、価格変動は小さくなると考えられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡

ビジネス

ロシア財務省、石油価格連動の積立制度復活へ 基準価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中