最新記事

日本経済

コロナ禍で苦境に立つ日本の航空会社 政府は側面支援、直接救済にはなお距離

2020年10月24日(土)11時01分

新型コロナウイルスの世界的流行で旅客需要が大きく落ち込む中、各国政府が航空会社の救済に乗り出している。大手2社が経営悪化に直面する日本も、政府が空港使用料減額による負担軽減策を打ち出し、与党内には追加措置を求める声がある。写真は10月23日、東京の羽田空港で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

新型コロナウイルスの世界的流行で旅客需要が大きく落ち込む中、各国政府が航空会社の救済に乗り出している。大手2社が経営悪化に直面する日本も、政府が空港使用料減額による負担軽減策を打ち出し、与党内には追加措置を求める声がある。

それでも、日本国内は少しずつ人の移動が再開しつつあるほか、金融機関が資金面で支えられる状況にあり、欧州のように国による資本注入にまで踏み込むムードはまだない。ルフトハンザの直接救済に踏み切ったドイツ政府など、欧州並みの対応までは今のところ距離がありそうだ。

税優遇など追加支援の声

「過去に例のない減額幅となります」。航空会社が支払う空港使用料の軽減策をまとめた国交省の幹部は10月初旬、与党関係者にこう説明に回った。

国交省によると、2020年度の空港使用料を年間2500億円程度と想定。このうち着陸、停留時の費用や保安料で880億円、管制サービスなどに支払う航行援助施設利用料で1600億円の徴収を見込んでいた。今回は着陸・停留料に絞って徴収率を45%の減額とする措置を講じ、最大125億円の支援策とした。

今年に入って新型コロナの感染が拡大して以降、航空業界は利用者が激減し、4─6月期はANAホールディングスが1088億円、JALが937億円の最終赤字に転落した。

複数の関係者によると、このうち最大手のANAは傘下の全日本空輸が路線の見直しを検討。国内線を羽田と伊丹発着の路線を中心に集約し、地方発着路線を縮小する可能性がある。国際線も羽田発着を優先し、関西、中部、成田の各空港は発着便の多くを当面休止する。

自民・公明の与党関係者の間では「航空インフラは何としても守らなければならない」との声が多い。残る費用負担の減免や税優遇についても検討を求める声が強まりそうで、ある閣僚経験者はANAを念頭に、「コロナという、自らの責めに帰さない事由によって厳しい状況になるのであれば当然、追加支援が必要になる」と断言する。

業界団体の定期航空協会は今春、政府との会合で支援を要望。空港使用料の減額のほか、航行援助施設利用料の支払い免除、航空機の固定資産税や燃料税の支払い猶予など、公的な負担金軽減策を求めていた。

別の自民党中堅議員は「『経営努力で乗り切って』と言うにも限界がある現状で、手付かずの負担金軽減や税優遇を年末にかけ働きかけたい」と話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

自民党の高市新総裁、金融政策の責任も「政府に」 日

ワールド

自民党総裁に高市氏、初の女性 「自民党の新しい時代

ワールド

高市自民新総裁、政策近く「期待もって受け止め」=参

ワールド

情報BOX:自民党新総裁に高市早苗氏、選挙中に掲げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中